JIJA日本公認会計士協会準会員会は、北海道、東北、東京、東海、近畿、中国、四国、北部九州と全国に分会があります。

インタビュー

渋佐 寿彦氏

2011年7月15日

経歴:2003年10月、公認会計士試験第二次試験合格。同月、新日本監査法人(現:新日本有限責任監査法人)にて監査業務やデューデリジェンス業務等に従事後、2007年9月に虎ノ門会計公認会計士共同事務所代表公認会計士就任。2008年9月、虎ノ門有限責任監査法人設立、理事長就任。会計・税務、監査・鑑定、法務・労務の専門家サービスをワンストップで提供する「虎ノ門LLP」のマネージングディレクターも務める。慶應義塾大学経済学部卒業。

これからのキャリアを考える ~私の10年後~

虎ノ門有限責任監査法人 理事長 渋佐 寿彦氏

■現在の具体的な業務内容は?

グループの営業や管理、監査業務やコンサルティング業務、税務業務を全て担当していますので、ルーティンワークは存在せず、日々、異なる業務を行っています。

今日を例にとれば、朝から外出し、横浜の御客様(社長様)と打合せ、資金繰りや銀行対応についての相談を受けて、13時に帰社、14時から起業を志し、当社で設立事務から、設立後の税務顧問を受託させていただく予定の御客様との打合せ、15時に再び外出、銀行に訪問してお客様の融資の相談をしてきました。更に、16時には帰社し、17時からオフィス移転の工事業者との打合せを行い、18時からは税理士の採用面接をしました。終日どこかのクライアントに行って、監査調書を作成していた新日本監査法人時代と違い、何か成果物が残る訳ではありませんが、日々、お客様のお役に立てていることを実感しながら、充実した毎日を送っています。

■準会員時代に何をやっておけばよいとお考えですか?

相手を思いやる心を持って仕事をすることです。相手というのは、御客様はもちろん、職場の上司や同僚など、仕事に係わる全ての人です。監査業務というのは、どうしても業務の性質上、相手の立場を理解しにくく、一方的になってしまいがちです。でもやはり、サービス業ですから、御客様を敬い、ホスピタリティを持って接してほしいと思います。頭の中では分かっていると思うので、それを行動に移せるか否かというだけなのですが、つい忘れてしまいがちです。それは職階・年次に関係ないですし、心がけるか否かだと思います。私も今から考えれば、新日本監査法人時代は全然出来ていなかったと思いますし、今も自分ではやっているつもりですが、至らぬ点も多々あると思います。

そして、それを本当に持っているかどうかは細かいところに現れると思います。例えば監査業務でいえば、資料を依頼する際に会社の担当の方を何度も呼んでその都度お願いするのか、それとも、事前に自分の中で順序立ててまとめることにより呼んできていただくのを一回にするのか、担当の方が部屋を出られる時に自分も席を立って感謝の気持ちを持って見送りをするのかというようなところです。細かいことですが、お客様から報酬をもらっている監査法人の立場としては、当然の行動であり、更に、一人ひとりが御客様つまり監査先の担当者の方の立場を考え、思いやりをもてば、自然と行われるものだと思います。大手の監査法人にいるとしても、監査先からは1人の会計士として見られている訳ですから、そういった細かいところにも気をつければ、きっと会社とも良い関係を築けるのではないでしょうか。

■なぜ独立の道を選んだのですか?

一言でいってしまえば、流れですかね(笑)。

今は違うようですが、私が所属してい部署では、会計監査だけではなく、デューデリジェンス等の様々な仕事をやらせていただける環境もあり、非常にやりがいがあって面白い職場でした。希望をすれば、どんどんやりたいことをやらせてもらえました。たまたま上司が辞めたこともあり、第三次試験(修了考査)を受験する年次には、たくさんのクライアントの主査を任せてもらい、貴重な経験をさせていただきました。ただ、逆に主査をやらせてもらったことによって、先が見えたといいますか、監査法人にずっと身を置いた場合の自分の将来像は、公認会計士を志していた時に思い描いていたものとは少し違うなと思いました。また、当時の大手監査法人は、まだ合併した前の組織を引きずっている部分があり、それが融合していく過程で、自分が全く想像していないことが起こるのではないかといった、漠然とした不安もありました。

公認会計士になってすぐのタイミングでしたので、転職ということも選択肢としてはありましたが、たまたま新日本監査法人時代の同じチームで信頼していた先輩が独立しまして、一緒にやろうということになりました。その頃は、内部統制報告制度のコンサルティング等で、非常勤で働かせていただける先も確保できていましたので、まずはチャレンジしてみようと思い、思い切って辞めました。その頃の会計士業界は景気も良く、後から思えば、人にもタイミングにも恵まれていたのかもしれません。現在は、その先輩は税理士法人を、私は監査法人を中心にということで役割分担をしてやっています。

■独立して監査法人を立ち上げられれて、一番やりがいを感じるところはどこですか?

同じ志をもった人間が増えていくこと、また職員が増えていくことに、一番やりがいを感じています。もちろん生活の為の給料は必要ですが、必要最低限を頂ければ自分自身は良いので、残りの部分は基本的には監査法人、そしてグループの成長への投資に充てたいと考えています人材には先行投資をして、機動力を保ちながら質・量ともに高めていきたいと考えています。結果として、会社規模が大きくなり、虎ノ門LLPというブランドがどんどん高められたら嬉しいですよね。

■今につながっている準会員時代の考え方は?

新日本監査法人時代は必死でしたから、あまり特別なことは考えていなかったかもしれません。当時は社会人になったばかりでしたし、真面目に目の前の仕事を全力でやっていました。真面目に働いたからこそ見えたこともあると思います。その頃一生懸命になって業務と向き合い、自分を高めようとしたことが今に活きているのかもしれないですね。自己実現欲はサラリーマンであっても、独立して自分で事業を立ち上げる場合でもそれほど変わらないと思います。監査法人を含め、会社はひとつのコミュニティですよね。独立しても、そのコミュニティのサイズが会社から経済社会に広がっただけです。会社の中で不満ばかりを言っているだけで、努力をできない人は、独立してもやっていけないと思います。更に、独立したから独断的でも良いというわけではなくて、逆にサラリーマン以上に協調性が必要かもしれません。

■日頃、心がけていることは?

一番心がけていることは、目の前にある業務を精一杯やることです。最大限のパフォーマンスを御客様に提供すること。その繰り返しで会社は大きくなっていくと思っています。メディアに訴えて、またはインターネットを使ってお客さん集めることもできますが、それだけでは会社自体が次のステージへ進むのは難しいと思います。会社が足腰の強い組織となるためには、つまり、従業員も含めて幸せになるためにどうすれば良いのか考えたら、御客様に対して良いパフォーマンスの仕事をして、相応の対価をいただき、それを次につなげて一歩ずつ成長していき、身の丈以上の背伸びをしないことが、会社に係わる全員が幸せになれる唯一の方法だと思います。当たり前のことのようですが、それを着実にやることが一番大事だと感じています。

■実際に経営をしていて、難しいと感じるところは?

収益と人のバランスは難しいですね。売上は相手があるので、自分の思った方向にはなかなかいきません。思った方向にいくなら、こういう人を先行して採ろうということになるのですが、当社の場合は、それぞれが築いた信頼関係からお客様の御紹介をいただき、受注をさせていただいていますので、次のお客様や業務が、業種等どんなお客様なのか、業務内容等どんな仕事なのか、スポット業務なのか継続業務なのかが予測できない面があります。組織が大きければ別ですが、現状のように15名程度の小さな組織ですと、人員の補充をはじめ、かなり難しいと感じています。

■独立するのに向いていると思う人はどのような人でしょうか?

会計系の法人・事務所には、大きく分けると2種類あると思います。代表がグイグイ引っ張って、その人がその組織の顔となり、個人事務所の延長線上で経営をされているところと、代表だけでなくみんなで協力して組織として大きくしていこう考え方で経営されているところの、2種類あると思います。

前者は、代表に類稀なる営業力やカリスマ性があって、人を引き付ける魅力があり、仮に経営手法が独断的であっても、そのカリスマ性に人がついていく組織だと思います。

私達は後者でしょうか。私達の場合は、仲間と共に法人、ひいてはグループのブランドを高めていく事によって御客様を獲得していくという理念が先にありました。そういう場合の代表には、カリスマ性があるに越したことはありませんが、それ以上に、考え方がブレずに、協調性を持って周りをまとめていける方が良いのではないかなと思います。

■会計士に求められるものは何だとお考えですか?

近年会計士の合格者の増加により、人数が増加していますが、人数が増えて業界の地位が高まり、職域が拡大することはとても良いことだと思います。人数を増やさないと職域は拡大しませんから人数を増やすことは賛成ですが、人数を増やしただけでは当然職域は拡大しないと思います。会計士業界は就職難とも言われ、厳しい状況ですが、こんな時こそ、会計士一人ひとりの資質が問われているのだと思います。職域の拡大は、御客様から必要とされることが出発点です。それは、会計士の職能を高め、制度的に会計士資格の業務範囲を拡げることでも実現しますが、それぞれがキャリアを積んでスキルアップをし、御客様から必要とされることでも実現可能だと思います。会計士一人ひとりが、職域拡大のための気概をもって取り組むことが、求められているのだと感じています。



渋佐寿彦:2003年10月、公認会計士試験第二次試験合格。同月、新日本監査法人(現:新日本有限責任監査法人)にて監査業務やデューデリジェンス業務等に従事後、2007年9月に虎ノ門会計公認会計士共同事務所代表公認会計士就任。2008年9月、虎ノ門有限責任監査法人設立、理事長就任。会計・税務、監査・鑑定、法務・労務の専門家サービスをワンストップで提供する「虎ノ門LLP」のマネージングディレクターも務める。慶應義塾大学経済学部卒業。

(文責:藤井 雄介)

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