日本公認会計士協会 準会員会

インタビュー
( JIJAジャーナル )

大津 弘子氏

経歴:1991年公認会計士試験二次試験合格後、太田昭和監査法人にて監査業務に従事。その後1999年の6月末に退社後、アーサー・D・リトル、日本ユニシスを経て、2005年4月にボストン・コンサルティング・グループに入社、現在に至る。

これからのキャリアを考える ~私の10年後~

ボストン・コンサルティング・グループ株式会社 プロジェクトリーダー 大津 弘子氏

■現在の具体的な業務内容は?

基本的にクライアントサービスで、3ヵ月から長いときは1年以上クライアントに常駐し、お客様から会社経営上の相談を受けたり、それに対する提案をしたりしています。そういった部分は少し監査に似ているかもしれません。ただ、お客様と一緒の目線で悩むので、より一緒にやっているという感覚はありますね。

監査との違いは、扱うテーマとクライアントの担当者のポジションでしょうか。全社テーマなので、その会社のキーマン、全部署とお付き合いができます。

我々は何かを知っていますということで付加価値は出しません。それが会計士と一番違うところかもしれません。考え方、視点、論点設定であり、「あなたの今の課題はこういうことに答える事ではないですか?」と言うことが付加価値になる世界です。

■準会員時代に何をやっておけばよいとお考えですか?

英語を勉強して下さい。若い人は時間があるのですから特に留学をしてほしいと思います。私が今、後悔しているとしたら、留学をしなかったことです。独学で勉強してきたものの、今もやはり英語では苦労しています。私自身、海外で働いたことはありませんし、英語でネイティブ相手にファシリテーションするのはとても難しく感じます。やはり言葉の壁は大きいです。もちろんカルチャーの違いもありますし。

■なぜ現在の仕事を選んだのでしょうか?

まず、監査は事後を扱っていると思いますが、事後ではなく、事前を扱いたいと思った点。それと、監査だと、クライアントの担当者が経理担当、経理部長だと思いますが、もっと上の方、経営者と接したいと思っていました。あとは、女性でコンサルタントをされている知り合いの方がいて、格好良いと思ったというのもありました。

■会計士の知識は役に立っていますか?

役に立っていないわけではありません。ただ、職場のみなさんも勉強して基礎知識をもっていますし、会計士の経験を武器にしてパフォーマンスを挙げている訳でも、業績を作っている訳でもありません。会計士の道からのキャリアチェンジですね。会計士を目指したのは、数字は元々得意だったのと、当時は今ほど男女平等ではない中で、女性として一生働きたかったので、資格があれば機会は均等だと思ったからです。ですので、大学生のうちにまず資格をとって、社会に出てから何をしたいか考えようと思っていました。

■現在の仕事の好きなところ、やりがいを感じるところは?

やりがいは毎日感じています。監査法人に勤務していた頃もクライアントリレーションを大切にしたいという思いはありました。今は相手が経営者になり、いただくお題も難しくなり、ひとりでは解けなくて、優秀な上司や世界中のオフィサーと共同してやっています。その中で、「すごいな、みんな頭いいな」って知的好奇心が満たされますし、チームとしてお返しができると、お客様から信頼も得られますし、やりがいはすごくあります。

■現在の仕事の難しいと感じるところは?

難しいからやりがいがあるんですよね。2度目のケースというのはないですからね。世の中が変わる時に、うちの会社としてどのようにビジネスに反映していけばよいのか、どのように環境変化を見立てて、3年、5年の期間で何を見直したらいいですかというような相談が突然きます。そして、悔しいですが優秀な人が周りに多い。しかも、そういう人ってすごく働くので、ついていくのは大変です(笑)。

■現在の仕事に向いていると思う人はどのような人でしょうか?

前提として地頭が良い事。基本的な考える力です。それだけではなくて、知的好奇心が旺盛でないと。なんでこうなるのだろうって、考える体力です。もういいやって思うと、思考って止まると思いますが、もっともっと考えたいという、いつまででも考えられる気力は必要だと思います。あと、クライアントサービスなので、コミュニケーションがしっかり取れる必要はあります。クライアントと話ができたり、チームワークを作れたり。あとはストレス耐性。ハードワークになることもあるので、私も体力をつけるためにジムに通ったりしています。

■コンサルタントとして様々な視点を持つ為に、日頃心がけていることはありますか?

アナロジーは使います。他業界で起きていたことがこの業界だとどうなるのだろうかと考える。類推ですよね。あの時にこうなった現象は、もしかしたらここではこうなるのではないかというようなことです。あとは、時間軸広げてみるとか、縦を横から見てみるとか、ホワイトスペースに注目するとか・・・こういう言い方すると少しうすっぺらいですかね(笑)。

違う答え方をすると、お客様が気付けることなら我々があえて言う必要はありません。それはお客様が考えられることなのか、気付けることなのかということが重要になります。何が付加価値なのかということは、とても意識しています。

そして、コンサルタントの仕事は、社長を説得するのではなく、引き出すことなのです。自分は答えを持っていないのですが、社長から答えを引き出す。「本当にそうなのですか、あなたの気付いていないここはどうなのですか?」と、どんどん開かせていくのです。相手の気付いていない思いに光をあてる仕事です。

■会計士に求められるものは何だとお考えですか?

ぜひ会計士として、クオリティの高い仕事をしてほしいですね。その上でそれを続けていきたいと思えば、続ければ良いと思います。監査に向いている人はいると思います。そして、あとは英語を勉強して下さい。若いうちは、単純な言語の勉強ではなく、留学して海外の文化を学んでほしいと思います。言語以上に文化の壁は大きいと感じています。こういう時は引いてみる、こういう時は笑いで飛ばしてみる、こういう時は攻めてみるとか。心を開く勇気も含め、日本人は他の文化と接する事に慣れていないじゃないですか。毎日、家に帰ってテキストブックを開いて何か聞いてというのではなくて、海外の方と積極的に交流をしてほしいと思います。

大津弘子:1991年公認会計士試験二次試験合格後、太田昭和監査法人にて監査業務に従事。その後1999年の6月末に退社後、アーサー・D・リトル、日本ユニシスを経て、2005年4月にボストン・コンサルティング・グループに入社、現在に至る。

(文責:藤井 雄介)

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