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インタビュー

土井 英司氏

2010年6月30日

出版マーケティングコンサルタント / ビジネス書評家
有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役。
書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長日経ホーム出版社を経て、日本サイトAmazon.com立ち上げに参画。2001年同社のCompanyAwardを受賞。
主な著書:「成功読書術」(ゴマブックス)「伝説の社員になれ!」(草思社)

会計士のブランド構築 土井 英司氏 インタビュー

出版マーケティングコンサルタント / ビジネス書評家

有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役。書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長。日経ホーム出版社を経て、日本サイトAmazon.com立ち上げに参画。2001年同社のCompanyAwardを受賞。主な著書:「成功読書術」(ゴマブックス)「伝説の社員になれ!」(草思社)

 近年の制度改正による大量合格、会計士人口の増加。これからの時代、会計士も一人のビジネスマンとして自らのブランド力を高めることが必要ではないだろうか。そこで今回、数々のビジネス書を出版コンサルタントとして世に送り出し、また、個々人のブランド構築を支援している土井英司氏に、公認会計士準会員のブランド構築について話を伺った。

●持っているものをどう活かすかがカギ

 「ブランドというのは、今持っているものをどう活かすかなのです。どう活かしてレバレッジをかけていくかが大事です。まず考えないといけないことは自分の強み。若手には価値がないとよく言われますが、『若手』に価値があることもある。若手であることも考えればブランド化できるのです。」

 土井氏自身、過去に『若手であること』を強みにした経験がある。大学卒業後、1年間ゲーム会社で働いた後、取材記者・ライターの道へ進んだ土井氏は、飛び込み営業でとある雑誌のインタビューページの仕事を獲得したことがあった。その際、強みにしたのは『ゲーム業界でのコネクション』と『若手であること』。若手の強みとは、すなわち学生との繋がりであった。ゲーム業界とも学生とも繋がりのない雑誌社は食いついた。『若手』の価値を生かして仕事を獲得したのだ。

 「ビジネス戦略上で考えなければならないことは2つしかない。それは市場(マーケット)と技術(スキル)。そして優先するべきはいつもマーケットです。なぜなら、スキルはお金で買えますが、マーケットセンスはお金では買えないからです。マーケットセンスとは、要するに人の気持ちがわかるかどうかです。だから、自分が一番相手の気持ちがわかるところ(ネットワーク)で勝負すれば、どんな人でも勝てる。」

 つまり、先程の話に当てはめると、土井氏は出版業界にはないゲーム業界と学生のネットワークで勝負して勝ったのである。そして、そのネットワークを提供している間に、不足していたライティング・編集・インタビューの「スキル」を身につけていったのだ。

 その後、土井氏は東京ウォーカーの編集や、編集プロダクション、日経ホーム出版社を経て、26歳のときにアマゾンに入社する。「アマゾンで活躍するにはいくつか条件があります。「ITの知識」、「英語」、「編集のスキル」、「小売りのノウハウ」です。ITは大学時代に勉強していましたし、英語はもともと得意でした。編集のスキルは、雑誌の編集のノウハウが活きました。「小売りのノウハウ」は、ゲーム会社勤務時代のゲームセンターでの経験が役立ちました。アマゾンは半分がメディアで半分が小売りですが、メディア出身者が多く、小売りの経験がある人はあまりいない。私は、過去の経験を元に、どう本を配置すれば全体の売上が最適化するかを考えることが出来ました。編集スキル、小売りのノウハウ、子供のころから読んでいたビジネス書、そういう小さな頃からのすべてが連鎖して、私はビジネス書のバイヤーとして名前が売れるようになったのです。」

 今持っているものを活かし、土井氏はビジネス書のバイヤーとして自己のブランドを構築したのである。

●ブランド構築に“独立”は必須の条件ではない

 藤沢武夫は本田宗一郎と共にホンダ自動車を作り上げた人物である。彼がいなければ世界のホンダにはならなかったと言われるが、本田宗一郎ほど知られてはいない。なぜなら、彼は組織を通じて社会に貢献する人物だっためである。

 「会計士でもそうですが、全体に貢献することが得意な人とそうでない人がいる。独立する前に、自分は会社にいた方がいい人間なのか、独立した方がいい人間なのかを見極める必要があると思います。そして、いずれの場合にせよ、どんな世界でもいいので、ナンバー1を目指すことです。藤沢武夫氏のようにナンバー2の中でナンバー1になってもいいのです。ナンバー1、オンリー1になれるのであれば、立場なんてどうでもいいのです。組織の中にいてもブランドは構築できます。」

 我々は自分の名を世間に広めるには独立が必要と考えがちである。しかし、土井氏に言わせればそれは必ずしも正しくない。ブランドとは、かけがえのない存在、ナンバー1、オンリー1になることである。代替できない存在=ブランドなのだ。そのためには独立していようと組織に属していようと、自分のいるフィールドは問題とならない。

 ブランドを構築するにあたり、よく人脈の重要性が語られる。「人生の時間には限りがあるから、有望な人かを目利きをする必要がある。そのポイントは、その人が仕事に真剣に取り組んでいるか、仕事に関して情熱があるかどうかです。」

 土井氏はブランドをこう表現する。「ブランドは錬金術みたいなところがあって、価値のない石ころをいかにお金に変えられるか、そういった面もあるのです。目の前の仕事を石ころだと言う人は一生お金には変えられないでしょうが、この先にブランドがあると思っている人はいつでもチャンスを掴むことができると思います。」情熱は情熱で連鎖する。だから、やる気のある人はやる気のある人を引き付け、その結果、そのような人には良い人が紹介されるのである。会計士でいいやと思っている人と、会計士で終わらないぞと思っている人では自ずとエネルギーの違いが出る。

 本音は全ての人を大事にしたい。しかし、何かを成し遂げるためには何かを犠牲にする必要がある。「何かを極めると決めたら、そこに特化して片寄っていかなければならない。時間も自分の目指しているところに最適化するために配分しなければならない。そういったストイックさも求められている。」と土井氏は言う。このようなストイックさや情熱、これらを持った人かどうかをきちんと目利きをすることもブランド構築には必要なのである。

●大切なのは“貢献する気持ち”

 ブランド構築にはビジネス戦略の2つの柱である『市場』と『技術』のほかに、『自分』という軸が加わる。『自分らしさ』である。しかし、ここに大きな落とし穴があると強調する。

 「みんな自分を最初に考えてしまうのです。就職活動の時の自己分析とか。絶対止めた方がいいと思います。自分から考えるから発想できないのです。自分を中心に考えるとき、人間は自分が興味を持っている所に優先順位付けをしてしまいます。自分を忘れないとダメです。自分にとらわれている人は自分ブランドを作れない。自分ブランドを作りたいと思っている人は自分ブランドが作れないという皮肉な話なのです。」

 どうすればブランドを構築できるのか。「自分の将来なんてどうでもよくて、お客様や社会の将来を考えるべきだと思います。そうすれば、自ずとやるべきことも明確になりますし、学ぶことも明確になります。その中で貢献できたあなたが『ブランド』になるのです。ブランドもお金もすべて結果なのです。だから結果の前には目的がなければならない。ゴールが世の中に認められるものであれば、人はあなたを支援してくれるかもしれません。だけど、あなたのために誰もあなたを支援してくれません。大成功した人は偉大なる目標と結びついている人なのです。その人を応援することが、社会にとって価値ある目標を実現することにつながっているから応援するのです。」

 戦後、日本はめまぐるしい成長を遂げた。それは、人々が会社を愛し、誇りを持って働いていたからである。何か(会社)に貢献する気持ちを持って働いていたからこそ、戦後の日本が著しい回復を遂げたのだろうし、今の日本がある。

 「人間は自分にとって特別なものを扱わなければ頑張れないのです。だから自分と補充関係にある対象を見つけられた人は他の人よりもはるかにパワーが出ますし、また、続けることができるのです。そして、何よりも出発点が他人への貢献になっているのです。何でもいいです。会社でも上司でも、自分が愛せる対象を見つけて、そこに自分を委ねてみてほしいのです。自分を守るのは最後の最後でいい。若いうちはリスクがない分、大いにやることです」

●準会員へのメッセージ

 もし土井さんが私たちと同じ準会員だったら、どのようなことをするか聞いてみた。

 「ジタバタせず現場で勉強すると思います。例えば、石油業界の監査が割り当てられるとすると、縁があると思って石油のことを調べるでしょう。そして少しリスクを犯して原油投資とかして。また、クライアントがサウジアラビアから石油を輸入しているのであればサウジアラビアに旅行に行ってパイプラインを辿ったりしますね。そうやって石油

のことを極めて、石油に強い会計士になります。そうすると、石油の次は何というように色々な業界を担当すると思うのですが、これを繰り返すとものすごい知識の幅になっていき、やがてかけがえのない存在になると思います。私ならば必ずブランドになります。」

そして、最後に次のようなメッセージを頂いた

 「ウォーレンバフェット氏が言っていることなのですが、成功したいのであれば3つのことが必要なのです。彼は伝記『スノーボール』の中で、自分の人生を雪玉に例えています。まず固い雪玉、自分のコアがないといけない。次にwet snowがなければならない。成果に直接結びつくのがwet snowです。powder snowではだめ。やっても、やっても雪が付かない、そういうフィールドで勝負してはいけないのです。だから自分のコアを見定めて、wet snowと結びついて、そしてlong hillが必要なのですね。複利と一緒で、ある程度の時間がないと物事は成就しないのです。この3つを忘れないでほしいと思います。だから、あんまりジタバタしない。せっかく御縁があって今の職場にいて、今の仕事をされているのでしょうから、この3つを意識して、目の前の人を大事にして欲しいと思います。」

(文責:竹本 泰明)

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