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インタビュー

磯崎 哲也氏

2010年1月1日

複雑化する社会の中で、会計士の力が役立つ場面は増えていくと思います。

 

1984年 早稲田大学政治経済学部卒業後、

株式会社長銀経営研究所へ入社。
勤務時に会計士試験に合格し、1992年に会計士登録。
ベンチャー企業設立参画等を経て独立し、
2001年 磯崎哲也事務所を開業し、現在に至る。
株式会社ミクシィ社外監査役や中央大学法科大学院講師も務めている。
人気ブログisologue運営者。

複雑化する社会の中で、会計士の力が役立つ場面は増えていくと思います。

-大学卒業後、長銀経営研究所へ入社、そして働きながら会計士取得という経歴をお持ちですが、明確なキャリアプランがあったのでしょうか。

当時は特に明確なキャリアプランを描いていたわけではありませんでした。シンクタンクが面白そうだとは感じていましたが、設立間もない長銀総研に入社したのは、良いタイミングだったと思います。
入社後の直属の上司が大手監査法人出身の厳しい人で、コンサルティング業務には会計の知識が必要だと、毎日しごかれましたが、それが私のキャリアに大きな影響を与えました。簿記2級の取得を勧められたんですが、悔しいので会計系試験の中で一番難しい会計士試験を目指したわけです。当時のクライアントの本社に隣接して会計士予備校があったのも幸運でしたが、隣の予備校で勉強したことをコンサルティングサービスで提供してるといった印象を与えるのもなんですので、仕事を終えて家に帰ると見せかけて、クライアントに気づかれないようにこっそり予備校に戻って勉強していましたね。

-働きながら合格するのは、大変ではなかったですか。

周りは会計士の勉強だけをしてる人たちでしたから、模試の成績も決して良い方ではありませんでしたが、何とか1年数ヶ月の勉強で合格しました。受験者の大半である大学生や卒業したばかりの学生と異なり、帳簿や伝票、取締役や監査役といった、勉強に出て来る「実物」に仕事で接してイメージが湧いたのは、働きながら受験するメリットだと思いました。

-会計士試験で得た会計の知識が、業務に役立つことはありましたか。

長銀が昔から長期的なプロジェクトの審査・貸付を得意としていた経緯もあり、長銀経営研究所は、プロジェクトの成否の可能性を分析するフィージビリティ・スタディを得意分野の一つとしていました。何年にもわたるプロジェクトのシミュレーションというのは、具体的には投資計画や将来需要を、予測P/L・B/Sに落とし込む作業なのですが、そこでは会計士試験で得た知識や、数値で物事を捉える思考が、非常に役に立ったと思います。
さらに、会計システム構築コンサルティングにおいても、会計士試験で得た知識は役立ちました。会計システム構築には、例えば、企業における販売活動を販売システムによってデータ化し、それを会計・財務報告につなげる一連のシステムを構築する作業があります。この際に総勘定元帳と補助元帳の関係を理解していることが、システムの仕組み作りやデータベース設計に役立つといったこともありました。

-公認会計士試験に合格した人が監査法人で働くことと事業会社で働くことの違いについて、どのようにお考えでしょうか。

監査法人でも、部署や業務によって求められる能力は異なると思いますが、事業会社でも部門によって、営業や生産、購買といった具体的な現場の業務もあれば、戦略的にビジネスを考える部門もあります。私が働いていたコンサルティングファームのような業種では、戦略的にビジネスを考える能力が要求されましたので、会計や税務、経済学、法律といった領域を統合的に考える会計士試験の知識を生かしやすい環境にあったと思います。

-試験合格者が監査法人ではなく事業会社に就職することについて、どのようにお考えでしょうか。

試験に合格しただけで事業会社でいきなり会計士としての価値を生み出すのは難しいと思いますので、例えば、監査法人で数年間経験を積み、試験で学んだ知識と実務経験が融合して価値が出せるようになってから事業会社で活かすというキャリアパスの方がいいのかも知れません。しかし、最近は監査法人で雇用できない人の数がかなり増えて来てるんですよね?
そうだとすると、合格後すぐに、事業会社や官庁に就職するというケースも増えるはずです。しかし、当然のことながら、事業会社は監査法人ほどには会計士のポテンシャルやキャリアパスのイメージを持っていないはずです。単に「簿記がちょっと得意なヤツ」と考えられて「経理部に配属」というシンプルなことになる可能性は高い。また実際、試験に合格しただけでは「簿記がちょっと得意なヤツ」以外の何者でもないことも確かです。
ですから、事業会社に勤める場合には、監査法人に勤める場合以上に、自分で自分が進む方向を模索し続ける必要があるんではないでしょうか。周囲は、ステレオタイプ的な「会計」の枠内に押し込めて考えようとするかも知れませんし、自分も「会計」の枠内に安住したくなるかも知れませんが、「いわゆる会計」以外の領域でも、会計士試験で学んだポテンシャルを生かせるチャンスはあると思いますし、「会計」の殻を破る必要もあるとも思います。

-最後に、会計士試験について、どのようにお考えでしょうか。

会計士試験はビジネスで活躍する能力を身につける良い試験だと思います。
ビジネスでも、抽象的な議論や担当者の趣味趣向に強く影響されてものごとが決まってしまうことがよくありますが、会計士という仕事は、そうではなく、根拠となるデータを把握し、それを積み上げて全体としての妥当性や適正性を考える仕事です。会計士試験は、具体的な数値に落とし込んで考えたり、合理的にものごとを説明する基礎を教えてくれるのではないかと思います。
また、最近の社会は非常に複雑化しています。ビジネス上の意思決定では、経済、経営、法律、会計、税務といった領域を横断的に理解することも求められますが、そうした領域を統合的に考えられるビジネスマンは、実際、ほとんどいません。会計士試験はそうした専門分野を恐れずに、具体的なデータや条文にまで深く入り込んで理解する「複雑さと闘う力」を身に付けさせてくれると思いますし、ビジネスや行政などの様々な分野で複雑化が進行する中、このような力が役に立つ場面は、非常に増えていくと思います。

-貴重なお話ありがとうございました。

(文責:加藤広晃)

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