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インタビュー

藤沼 亜起氏

2005年3月24日

相次ぐ会計不祥事の発生、新試験制度の導入等、近年、公認会計士を取り巻く環境は劇的に変化しています。このような時代において、我々会計士補はこれからどのような環境におかれることになるのか、またそのような環境においてどのように行動すればよいのか、そのような疑問に答えて頂きたく、今回、日本公認会計士協会会長、藤沼亜起氏にインタビューをお願い致しました。

相次ぐ会計不祥事の発生、新試験制度の導入等、近年、公認会計士を取り巻く環境は劇的に変化しています。このような時代において、我々会計士補はこれからどのような環境におかれることになるのか、またそのような環境においてどのように行動すればよいのか、そのような疑問に答えて頂きたく、今回、日本公認会計士協会会長、藤沼亜起氏にインタビューをお願い致しました。藤沼氏は御多忙の中、我々のインタビューに快く応じてくださり、ざっくばらんに有意義なお話を聞かせてくださいました。以下はそのインタビューの内容です。

(文責:藤田 耕司)

  1. 最近の会計士業界の動向について
  2. 会計士の数の増加について
  3. 今後の会計士の活躍の場について
  4. 監査報酬について
  5. これからの会計士に求められること
  6. 現在の会計士補に対するメッセージ

最近の会計士業界の動向について

ディスクロージャー制度の信頼性の確保に向けて
それでは最初に最近の会計士業界全体の動向について、会長がどのように考えていらっしゃるか、大まかな形で結構ですのでお聞かせ下さい。
大きく分けて二つあると思います。一つは開示情報の信頼性について、特に昨年の秋に西武鉄道の問題が出てきてからIT企業の粉飾決算などが相次いできたということがあって、開示情報をいかに信頼性あるものにするかということが社会の関心を得ています。金融庁も「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」という第1弾、第2弾の対応策を発表しました。東京証券取引所も財務情報の適時開示について経営者に宣誓書や社内体制についての説明書を添付書類として出すように求めたことに加え、不実記載がないことについての確認書を求めており、社会が企業の開示情報について非常に神経質になってきています。会計士に対して、会計士はもっときちんと仕事をするべきではないかという論調が非常に多いわけです。会計士協会もそれに対応して、監査の時間を十分に確保して欲しいとか、会長通知で有価証券報告書の訂正報告書を作成する場合には、会計士もそれに深く関与して訂正報告書についてきちんと会社と連携を取って仕事をして欲しいといった呼び掛けをしてきました。
そんなことでいろいろなアクションは取っているのですが、それは社会の財務情報についての信頼性について会計士の役割期待というのはすごく高まってきたということの表れでもあると思います。
品質管理レビューの強化
もう一つは、公認会計士法が変わって昨年の4月から公認会計士・監査審査会ができました。この審査会は、公認会計士協会の各事務所に対する品質管理レビューをモニタリングしています。その調査結果を今年の2月に提言という形で、公認会計士・監査審査会から公認会計士協会がいただきました。それを見ると、協会の品質管理レビューの体制が十分でないという改善勧告、改善案をいただいたので、協会としても自主規制機関としてそれにきちんと対応しなくてはいけないと考えてその対応策を作りました。
最近の会計士協会の動向は、監査の中身の充実についてきちんとしろという社会の要請に対して、我々が受身ではなくプロアクティブ、つまり能動的に行動しているというのが大事だと思っています。
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会計士の数の増加について

東京ではまだ人を求めている
合格者の増加に伴い近年では監査法人に入れずに就職浪人する会計士補の数が増加しているという問題が生じています。このように会計士の数が増加することについてどのようなお考えをお持ちですか。
私は前に国際会計士連盟の会長をやっていましたが、そこの最近のデータを見ると世界で250万人の会計士がいて168団体あります。割ってみると1団体に約1万5,000人の会員がいることになります。公認会計士協会は約1万5,500人の公認会計士と4,500人弱の会計士補がいるわけですから、経済規模第2の国としてはこんな数で果たして足りるのかという基本的な問題認識が私にはあります。そういう面では、日本の公認会計士職業はまだ発展途上ということだと思います。
昨年の合格者は1,378人、合格率は8.4%ということで変わりません。私は会計士協会の会長になる以前から特に大手の法人に働きかけて議論をし、できるだけ採用者を増やしてくれという話し合いをしてきましたが、すっかり状況が変わり東京では多分まだ人を求めているのだと思います。それは内部統制の仕事とか、いろいろな新しい仕事のチャンスが増えてきているということだと思います。
ところが残念ながら求められる業務のニーズが合わないというようなミスマッチや、地域的なミスマッチがあると思います。仕事が東京に集中しているようなところがあるので、地方の合格者の人たちが地元に在住しての仕事となるとどうしても限りが出てきます。そういったミスマッチはあるものの、全体的な会計士補に対する需要については、今はそんなに悲観的な状態ではなくなったと思っています。おそらく各監査法人も今年の試験では採用を増やし、もっと人が欲しいということになっていくのではないでしょうか。

租税法の導入について

税理士登録するにふさわしい人材の育成
2006年度から新試験制度に移行します。この新試験制度になりまして新しく租税法という科目が導入されることになりますが、これについてどういった意図の下で科目の導入がなされるかということについてお聞かせ願いたいと思います。
いま公認会計士になると税理士業務をやりたいという人は、税理士会に登録申請をすれば税理士になれるわけです。税理士会は平成30年に会計士が5万人なんていう話になると、この全部が税理士になるわけではないけれども、多くの競争者がマーケットに来ると困るという気持ちがありますよね。ですから、租税法という基本的な税の概念や知識が、会計士試験の受験科目の中にないと、税に関係する勘定の監査ができないという恐れがあることと、税理士会でも会計士が税理士登録するときには税法科目の試験を受けなさいということになりかねません。そういうことがないように公認会計士試験、実務補習、修了試験でも税務科目の試験や研修をきちんとやって、公認会計士の税務知識を常に高いレベルに維持していきたいと思っています。 

ただ今回残念なのは経過措置の関係で平成15、16、17年の合格者については、租税法と監査論の論文試験を他の受験者と一緒に受験しなければいけないということです。ただ試験の合格率8.4%というのは全体の合格率で、論文式の合格率は42%ぐらいですから論文式そのものはそんなに合格率が低いというわけではないと思いますので頑張ってください。

税理士会のほうとの兼ね合いで租税法導入のお話がありましたけれども、これからも会計士試験に合格し、税理士登録することによって税理士の免許が与えられるというシステムは継続されていくものですか。
我々はそういうふうに思っています。そのためには会計士は税務の勉強をしていないと言われないような体制を作らないといけません。だから実務補習もきちんとやりますし、修了試験もきちんとやります。実際に税務がわからないと会社の監査ができないということがあるわけでしょう。法人税、消費税や個人所得税というのはある程度、一般教養みたいなものですから、そういう面ではベーシックなことというのは会計士たる者、きちっとわかってもらわないといけません。このように税に関する知識を会計士がマスターする体制を整えれば、税理士登録の際に改めて税理士試験を受けるのはおかしいではないかということが強く言えるのではないでしょうか。
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今後の会計士の活躍の場について

会計士の仕事について、特に日本はまだ成長過程にある
会計士の新たな活躍の場が増えているということについて、いま企業内会計士ですとか、その他もろもろの会計士の働く場所がこれから増えてくると思います。そのへんの動向とか会長のお考えをお聞かせ願いますか。
私は海外の経験が長いので、アメリカなどに比べれば日本では会計士職業はまだまだ成長分野の仕事であると感じます。米国のAICPAの会員の50%強は企業内会計士です。日本も専門分野のある人を中途採用する企業が増えていますので、企業勤務の会計士が今後増加すると思います。公的分野ではいま包括外部監査人という制度があって、地方自治体の行っているいろいろな事業をピックアップして調査し、問題のある点について改善提案を出すといった仕事があります。弁護士もできるし、税理士もできるということになっているのですが、現在包括外部監査人の80%以上は会計士です。やはり経済的な効果というものを期待されているわけですから、物事を財務的に見て、分析して、改善提案を出すというのは、会計士が必要となってくるのです。商法などの法的な知識もあり、分析能力もある。それを提示できるのはやはり会計士が多いのです。
公的部門の民営化、あるいは公的部門の財務諸表を作るという話になってくると、これもやはり会計の分野で会計士を頼むという話になってきます。一般企業では新しい内部統制の仕事が忙しくなると思います。その他の保証業務、四半期のクォータリーレポートとか、環境報告、そして企業の社会的責任に関するCSR(Corporate Social Responsibility)報告など、これらについての情報収集や編集のアドバイスや保証報告書の作成はやはり会計士の仕事になります。 

我々のやる仕事の分野というのはすごく広いわけです。情報を裏付ける資料を分析して、使われた前提がいいのか、情報は正確に計算されているかどうかなどについての保証(assurance)を与えるものです。社会にはこの分野についての需要がかなりあるわけです。
責任は伴いますが、我々のプロフェッションというのは非常にいい職業だと思います。

間接金融から直接金融へと移行するに当たり・・・
アメリカでは監査報酬とか監査期間が日本よりもずっと大きくて長いと言われていますが、日本もこれからそういう方向に向かっていくのでしょうか
日本はこれから少子化の時代を迎えます。人口が少ないということは、社会の需要そのものが減ってきているわけでしょう。活力を得るには新しい事業をどんどん起こして、そこで雇用を増やしたり、あるいは付加価値を高めてもらわなければいけません。それには間接金融、つまり銀行が資金の仲介をする方式ではなく直接金融、金融から証券へという方向に行かなくてはいけないわけです。 

今まで日本は間接金融が主体だったので、財務情報については銀行に特別に情報提供すればよかったんです。そういう中にあって企業からすれば、私たちは銀行に信頼されて資金提供を受けているという自信がある。一方銀行は担保ももらっているし、保証もあるので心配ない。財務諸表監査をそれほど重要視しないというメンタリティがあった。株主の目がどうだなんていうことはあまり意識していませんでした。
企業としては会計監査というのは、法律上の義務があるからという理由でやっていたわけです。それがバブル経済崩壊後、状況が大きく変化した。銀行は不良債権の処理に追われ、融資は当てにできなくなった。株式の持ち合いが減り外部株主の目を気にするようになった。今はバランスシートの中身と事業の成長性が大きく問われる時代になった。つまり、会計士の出番が増えたということです。そういう面で監査時間と監査報酬はまだまだ発展可能なわけです。

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監査報酬について

報酬を下げることについて唯々諾々とクライアンツの言うことを引き受けるのはだめだ
合格者が増えて、多くの会計士を抱えるには多くの仕事があって、多くのお金をもらっていないといけないというのが前提にあると思いますが。
日本では会計監査業務のサービス提供者というのは、会計士補を入れて2万1,000人もいないわけでしょう。仕事量そのものは増えていく。公的部門も含めてベンチャー企業の株式公開とか、それ以外のM&Aのデュ・デリジェンス(due diligence)だとか、内部統制の仕事とか。しかし、何故かサービス提供者が少ないのに報酬が変わらない、時には下がっているというのは、何とかしなくてはいけない。いま対応策を検討しています。今は仕事の質を問われている時代です。唯々諾々とクライアンツの言うことを引き受けてくるのは仕事の質の低下に繋がるのでだめだと思います。
海外、欧米諸国では事務所の売上高の約18%が訴訟関連費用と言われています。売上高の18%を払うなら、変な仕事は引き受けられません。日本の監査報酬が安かったという一つの理由として、日本においては監査の訴訟が頻繁に発生しなかったということが挙げられます。しかしこれからはそんな時代ではなくなるでしょう。今回の商法改正で、監査人は株主代表訴訟の対象となります。いろいろな問題企業が出てきているわけですから、こういった現状を考えれば、監査報酬が安くなるなんていうのは逆に信じられないというのが私の気持ちです。監査法人にしても個人の事務所についても、まず、きちっとした監査を実施する。そしてそれに対応する適切な報酬を取っていただかないと監査人の独立性の問題にも繋がると思っています。
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これからの会計士に求められること

ファンダメンタルな会計士の職業人としてのバックボーンをきちんとしてもらいたい
次の質問に移ります。これからの会計士に特に求められることを、会長がどのように思われているかをお聞かせ願いたいと思います。
会計士職業人としてのバックボーン、つまり職業倫理をきちんとしてもらいたいですね。新しい公認会計士法で公認会計士の使命と職責が規定されたのですが、そこで大事なことは、我々は社会のために仕事をしているといった、仕事を通じてパブリックに対する貢献をするという意識を持って欲しいということです。というのは情報に信頼性を与える仕事をしているわけですから、その情報が間違っていたり偽物だったといった場合、信頼して投資した人やお金を貸した人はどうなるのかという話ですね。
あと仕事の中身についてはプロフェッショナルとして、事務所の教育も含め、いろいろな機会をとらえて自分の知識やスキルをレベルアップし、専門性を高めてもらいたいですね。国際的視野も広めて下さい。
「翻訳したものを見せてくれ」なんていうのは仕事にならない
これからはグローバルな時代ですから、英語の契約書を持ってきたときに、「翻訳したものを見せてくれ」なんていうのでは仕事になりません。我々の仕事はインテリの仕事だというイメージがあるわけですから、英語がだめですと初めから毛嫌いするのはよくないのではないでしょうか。私も会計士補の頃は英語は苦手でした。
私が常に意識しているのは、将来国際基準をつくる組織の活動に多くの日本人がどんどん参加して、議論の場で自分の意見をきちんと言えるような人材を育てなくてはいけないということです。
かなり英語の重要性は高いと。
皆さんがこれから15年から20年後に事務所に残ってパートナーになったとき、あるいは自分の事務所を開業した時、英語のできない自分を想像してください。経済のグローバル化がさらに進展しているので、けっこう厳しいはずですよ。(笑)そうでしょう。あなた方があと10年とか15年たてば幹部に近づいていくわけだから、好むと好まざるにかかわらず英語力が期待されるわけです。中国人との会話も英語が共通語として使われるでしょう。大きなクライアンツなんて、みんな国際的な取引や投資をやっているわけですから
戦略をもって専門性を身につける
それと専門性の中で、例えば金融といっても銀行もあれば、証券もあれば、保険もあり、だんだんと専門的になっていきます。そうすると、自分はどういう分野に特化していくのかということも考えていかなければいけません。何も考えずにいろいろとあっちこっちと手を出していると、みんな中途半端で専門性もないということになってしまいます。
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現在の会計士補に対するメッセージ

最後に現在の会計士補に対して何かメッセージをお願いします。
メッセージとしては、会計士という仕事は社会的にも重要な仕事ですから、その役割を認識してきちんとした仕事をして欲しいということですね。我々日本のプロフェッションというのは先ほども言いましたようにまだまだ発展途上ですから、将来は仕事がさらに増えていきます。そういう面では社会のニーズに合うような仕事をしていれば、必ずそれに対するリターンはあります。皆さんは経過措置の関係で追加の試験を受けなければならないということでは大変だとは思いますが、ただ先は開けていますから、このまま着実に努力していって欲しいと思います。私は公認会計士厚生年金基金の理事長でもあるので、皆さんが頑張って活躍してくれないと私の年金にも影響が出る…(笑)。ということで皆さんの活躍を期待しています。
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日時:2005年3月24日

場所:日本公認会計士協会応接室
聞き手:
藤田 耕司(東京分会幹事)、渋佐 寿(代表幹事)、
松澤 伸(広報委員長)、合場 真人(東京分会幹事)

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