【海外視察レポート】第2章 生成AI
要約
生成AI導入 位置づけ
・従来 CAATsやExcel 、抽出・集計など定型作業 効率化に限定
・生成AI 登場により、文章情報 整理、差異分析、リスク候補提示など判断補助領域へ活用
が拡大
香港における活用状況と日本と 差
・香港で 、監査調書、会計方針メモ、開示チェック、リスク評価などに生成AIを活用
・IFRS近似基準・英語環境、金融中心 産業構 、海外投資家比率 高さが導入を後押し
・日本 JGAAP・日本語中心 多基準環境であり、標準化が難しく導入が相対的に慎重
内部監査・サステナビリティ領域で 可能性
・内部監査で 、業務データや文書へ 広範なアクセスを活かし、継続的モニタリングや予防型
監査が可能
・サステナビリティ開示 非構 化・定性情報が中心であり、生成AI 活用が不可欠
生成AIを前提とした監査 将来像
・AIエージェントにより、監査計画から報告まで 自動化が進展
・監査人 価値 、AI 限界理解、アウトプット 評価、説明責任 遂行に集約される
AI時代に求められる能力
①AIに関するテクニカルな能力
②アウトプットを踏まえて最終的な判断を下す能力
③一つ一つ 業務をより深く理解する能力
日本と香港 AIに関する人材育成 違い
・日本→AIに「慣れる」ことが目的である印象
・香港→会計士としてAIをどう「利用」するかが目的である印象
じめに
本レポート 、2025年10月初旬に実施した香港海外視察におけるAIに関する調査結果をまと
めたも である。香港会計士協会、Deloitte、PwC、EY、JETRO、NAC、香港大学などを訪問し
最先端 知見を収集した。
監査および内部監査 、職業的専門家として 判断と経験をもとに実施される。
一方で、近年
データ量 増加、ビジネスモデル 高度化、規制環境 複雑化を背景に、保証が求められる領
域も広くなり、従来 監査アプローチ みで 資源 制約から十分な保証を提供することが困難
になりつつある。そ ような環境下で、生成AI(Generative AI) 登場 、監査業務を効果的か
つ効率的に実施する上で、共存していかなくて ならない存在である。
本稿で 、香港視察で学んだ生成AI 活用方法をもとに、生成AIが監査および内部監査にど
ように取り込まれてきた かを「過去・現在・未来」 時間軸で整理し、日本におけるさらなる実用
方法 糸口を探るとともに、我々会計士が生成AIに対してど ような姿勢を持ち、ど ように対
応していくべきかについて考察する。
過去:生成AI以前 監査におけるIT活用とそ 限界
生成AIが実務に登場する以前においても、監査業務で 一定 IT活用が行われていた。代表
的なも が、CAATsやExcelマクロである。
CAATs 、主に監査業務 「効率化」を目的として導入されてきた。監査人 、クライアントから
提供された大量 仕訳データや取引データをCAATsに取り込み、特定 条件を設定してデータ
抽出を行っていた。例え 、仕訳テストにおいて、高額な仕訳、休日や深夜に入力された取引、
ビジネスモデルから異常な勘定科目や特定 入力者に関連する仕訳など 抽出である。従来
サンプルベースでしか確認できなかった領域について、全件データへ アクセスが可能となった
といえる。
また、Excelマクロ 、差異分析や勘定科目別集計、内部統制評価結果 取りまとめなど、定型
的かつ反復的な作業を自動化する目的で用いられてきた。作業時間 短縮や計算誤り 防止と
いった効果 一定程度得られてきた。
しかしながら、これら IT活用に 明確な限界が存在している。CAATsやExcelマクロ 、「人が
設定したルールを正確に実行するツール」であり、リスク 重要性や異常 意味を自律的に判断
すること できない。ど 条件でデータを抽出する か、抽出結果をど ように解釈する か
、すべて監査人 経験と判断に依存していた。
現在:生成AIを前提とした外部監査・内部監査 高度化
(現在①) 外部監査における生成AI 役割
日本で 、法人内 情報管理規制が厳しいことから、現時点で 会議中 文字起こし、アジェ
ンダや議事録 作成、翻訳といった周辺業務で 利用が中心である。
一方、香港において 、
視察における関係者へ ヒアリングから、監査調書やクライアント 重要な会計方針や基準と
整合性をサマライズした会計方針メモ 作成、開示内容 チェックなど、より中核的な監査業務
に生成AIが活用されている。具体的に 、文章表現 一貫性や会計基準と 整合性確認、過年
度と 開示差異 把握といった作業を生成AIが担い、監査人 そ 結果をレビューする役割を
果たす。
また、生成AI 仕訳および取引分析 高度化に貢献している。従来 CAATs 得意分野が抽
出であった に対し、生成AI 過去データや他拠点データと 比較を通じて、異常な傾向やパ
ターンを検出することが可能である。私 所属法人でも仕訳テストにおける生成AI 利用が始
まったが、これにより、監査人 全件データを対象としつつ、リスク 高い領域に重点的に監査
資源を配分できるようになった。
さらに、香港において、生成AI 監査計画やリスク評価 段階においても利用されている。内部
統制文書、業務フロー
、前年 監査調書などを読み込み、重要な虚偽表示リスク 候補を整理・
提示することができる。今まで 監査人 役割 、過年度 理解やヒアリングからExcel等で集
計・分析することにあったが、現在 役割 そ 結果について妥当性を評価する役割を担う。
こ ように、香港で 様々な方法で生成AI 監査利用が進んでいるが、理由を考察したい。ま
ず、香港 元々イギリス 植民地であったことやリージョナル・パブとして 機能(「香港 社会・
経済状況 分析」を参照)から、主に使用されている会計基準がIFRSに近似したHKFRSである
に対し、日本 IFRSと 違いも多いJGAAPである。また言語についても、香港 英語が公用
語 1つである に対し、日本 日本語 みが公用語である。そ ため日本 生成AI 特性(標
準化に強く、英語データ 精度が先行する)と相性が良くないため、生成AI 導入が相対的に遅
れると考えられる。次に、香港 主要産業 金融である(「香港 社会・経済状況 分析」を参
照)が、金融 フィンテックなどテクノロジー 利用が先行しやすい業種であり、クライアントデー
タに対応するために生成AIを監査法人としても使わざるを得ない。また、ファンドや海外投資家
比率が高いことから、AI 活用により く・深いアウトプットが求められる。さらに、香港”Try
and error” 精神や後述する生成AIに関連した人材育成が生成AI 監査利用を後押ししている
と想定される。
一方で、民族的に日本人が保守的である に対し、香港 積極的という違い あ
るも 、情報規制について 両国で差 ない。そ ため、香港で 現段階で生成AI 監査利
用による問題が起きていないため、依然”Try”出来ているだけであり、クライアント 重要なデータ
を扱う以上、日本 ように未然に問題を防ぐために慎重になること 必ずしも悪いと 言えない
と考える。
(現在②) 会社 内部監査における生成AI 可能性
香港視察におけるヒアリングにより、内部監査において 、生成AI 影響 外部監査以上に大
きいと考えられることから、香港で 導入が進んでいる。内部監査 AMLや販売・流通プロセス
など、広範な業務領域を対象とし、業務データやログ、文書情報へ アクセス範囲も広い。こ
特性により、生成AIを活用した高度なデータ分析や継続的モニタリング 実装が可能である。特
に、内部監査 改善・助言・予防を目的とする機能であることから、必ずしも完全な正確性を前提
とせずとも、リスク 兆候を早期に把握する観点で、生成AIを用いた継続的モニタリング 重要
性が高い。
生成AI 、業務マニュアル、社内規程、業務記録といった大量 文章情報を整理・要約し、業務
プロセスや統制目的を構 化することができる。これにより、内部監査人 業務理解に要する時
間を大幅に削減し、リスク評価や改善提案など、より付加価値 高い業務に注力することが可能
である。また、業務システムや文書データに常時接続することで、従来 事後的に行われていた
監査を、リアルタイムまた 準リアルタイムで実施することも可能である。
さらに、内部監査 外部監査と異なり、基準適合性 確認にとどまらず、業務改善や経営へ
示唆が求められる点に特徴がある。生成AI 、過去 監査結果や指摘事項を横断的に分析し、
組織全体に共通する弱点や傾向を可視化することができる。こ ような活用を通じて、内部監査
洞察力と提言 質 大きく向上し、内部監査機能そ も 高度化に寄与していくことが想定
される。
(現在③)サステナビリティ領域における生成AI 利用
現在、世界的にサステナビリティへ 関心が高まり、投資家 投資 判断基準 1つとなりつ
つある。今後、サステナビリティ開示およびそ 保証 需要 一層増すが、非財務情報であるサ
ステナビリティ開示および保証 ために 、生成AI 利用が有用と考えるため、言及したい。
以下 点から生成AI 利用 有効なツールであると考える。
第一に、サステナビリティ情報 非構 化データが中心である点が挙げられる。方針説明、現場
報告、サプライヤーから 文書など 文章情報が主体であり、従来 数値中心 監査手法で
十分に対応できない。
第二に、サステナビリティ情報 財務情報と 横断的整合性が求められる点に特徴がある。環
境投資と設備投資、人権リスクと調達構 など、複数 情報を関連付けて評価する必要があり、
生成AI こ ような複雑な関係性を整理する上で有効である。
第三に、ISSB等 サステナビリティ基準 原則主義的であり、定性的判断を多く含む点が挙げ
られる。生成AI 、文章表現 一貫性や前年差異、他社と 比較を通じて、監査人 判断を補
強する役割を果たす。
ここから 筆者 考察である。香港において日本よりも生成AI活用が進んでいる背景に 、サ
ステナビリティ開示と 親和性があると考えられる。香港 1997年までイギリス 植民地であっ
たという歴史的背景を持ち、英語が共用語であるなど、欧州と 結びつきが強い。こ ため、EU
を中心としたサステナビリティ重視 潮流 影響を受けやすく、投資家から 要請も強い。また、
中国が香港を通してビジネスを拡大を図っていることからも、投資家から 要請に応えていく必
要がある。
一方、日本 米国と 結びつきが強く、現時点で 米国 サステナビリティよりも経済成長を重
視する政策 影響を受けやすい。こ 歴史的・制度的背景 違いが、生成AI活用 進捗度にも
影響を与えている可能性がある。
未来:生成AIを前提とした監査 再定義
将来的に 、人間が指示せずに、AIが自ら考え、判断し、行動する「AIエージェント」によって監
査が行われていくと考える。
具体的に 、外部監査において 、計画時点 契約書やミーティングなど様々な資料 ドラフト
作成、リスク評価、実証時点 証憑と 突合、再計算、増減分析、議事録作成、完了時点 報
告書等 ドラフト作成や文書化、開示チェックを生成AIが自らアウトプットまで作成可能になるで
あろう。また、内部監査において、生成AI ERPや業務システムと連携し、リアルタイムに近い形
で 継続的監査および継続的内部監査も可能にすると考えられる。つまり、監査 計画から完
了まですべて 手続きを生成AIが終わらせることも可能であると考えられる。
こ ような環境下で、監査人に求められる価値 何か。
まず第一に、AIを使いこなす力、すなわちテクニカルな技術力である。監査業務でいえ 、開示
書類 チェックから高度な論点 検討に至るまで、会計士に 非常 億 場面で当該能力が求
められる。AIが業務に用いられていなかったこれまで 仕事 中で 、エクセルやワード等が使
用できれ 問題なく業務をこなすことができた。しかしAIが通常業務 一部として組み込まれつ
つある昨今で 、AIを使いこなせるスキルを持つことが必須となってきている。たしかに自然言語
モデルであるAI 使うこと自体 簡単であるが、業務上用いる場合に 正しく使うことが当然に
求められる。そ ため、AIがど ような仕組みで動いていて、ど ような情報をインプットしたらど
うアウトプットされる かといった基本的な知識を持つことがこれから 会計士に 求められてお
り、こ 点 日本公認会計士協会テクノロジー委員会が公表した「監査におけるAI 利用に関す
る研究文書」においても言及されている。こ スキル 、生成AI 正確性と限界を理解し、もっと
もらしい誤り、いわゆるハルシネーションに留意するスキルを含んでいる。これ 、生成AI もっ
ともらしい回答を生成する一方で、事実誤認を含む場合があり、前提条件 整理やアウトプット
検証 不可欠であるためである。
また、生成AI アウトプットを評価し、最終的な判断を下す能力も必要である。基準が不明確な
領域や、あるべき論と実務上 制約が衝突する場面において 、職業的専門家として 判断が
不可欠であり、生成AI あくまで補助的な存在にとどまる。これ 言い換えれ 、責任 所在を
明確にする能力ともいえる。ブラックボックス化している生成AI 分析結果 前提や限界を理解
し、利害関係者に対して説明できる専門性こそが、今後 監査人に求められる重要な資質となる
だろう。
最後に、業務をより深く理解する力が求められることも忘れて ならない。AIという存在 インパ
クトがあまりにも大きいため思わず意識から抜けてしまいそうになるが、AI 仕組みを理解し、使
いこなせるようになったとしても、ど 場面に適用できるか(情報 秘匿性や職業的倫理観含め)
を正確に理解していなけれ AIを使って業務を進めること 当然できない。そ ため、これまで
求められてきた以上に、自分 担当範囲だけでなく監査業務全体に目を向け、どこに生成AIを
適用するチャンスがあるかや、どういった部分に適用すべきかを考える力が必要になってきてい
る。そ ために 日々 業務をただこなす で なく、なぜそ リスクに対してそ 監査手続を
行う かといったような、より根本的な問いを常に持ち、ある種 興味・好奇心をもって業務に向
き合うことが必要であろうと筆者 考える。
日本における会計士 人材育成 現状
で 、上述 ような人材 ど ように育成されるであろうか。現時点における人材育成 、監
査法人と公認会計士協会が主な役割を担っている。それぞれ 監査法人において 、各監査法
人が開発した社内で用いられるAIツールを業務に適用するため 注意点や適用可能な領域に
関する研修を提供している。
一方でJICPAで 、特定 ツールで なく、公認会計士として生成
AIをどう活用すべきかという点について、より一般的なAIを想定して研修を提供している。具体的
な講座でいえ 、2024年9月に事業会社と共同で生成AI 基礎や利用上 注意点、業務へ
適用に関する研修講座を開催した。また2025年8月に 、「監査人必見!AI時代 新しい働き
方」と題したイベントが開催され、当イベントで 生成AI 監査業務へ 具体的な活用事例や、
AI時代における監査人 新しい働き方に関する示唆も提供された。
香港における会計士 人材育成 現状
香港においても日本と同様、AIに関する人材育成に対して各監査法人が担う役割 大きい。し
かし、特にグローバルファームである場合に 研修 基本的に統一されているため、日本と大き
な違い なく、生成AI 基本的な仕組みや、適用する際 注意点、適用可能領域等に関する研
修が実施されている。
一方でHKICPAで 、体系的かつ専門的な人材育成 取り組みに力を入
れている。具体的に 、digitalization seriesというコースを有料で提供しており、
一般論で な
く、会計士として会計やファイナンス 領域でど ようにAIを活用すべきかという点にフォーカスし
た講座を開催している。具体的な内容として 、AIに関する基礎知識や活用事例を紹介するコー
スから じまり、会計士 業務で活用できるデータ分析に関するコース、サイバーセキュリティや
DXに対してAIが及ぼす影響に関するコース等、計6つ イベントを提供している。
人材育成 違いとそ 原因
上記で見てきた両会計士協会 AIに関する人材育成 違いについて整理する。
HKICPA 、会計やファイナンス 領域において活用できるAIを利用したデータ分析・データ管
理、サイバーセキュリティ等 実用的なスキルを研修内容として取り扱っている一方で、JICPA
各会社における活用事例 紹介が主として扱われている。すなわち、HKICPAで 会計×生成AI
専門人材として 実用的なスキル 獲得が期待でき、JICPAで 監査法人や事業会社におい
てAIがど ように活用されているかを知ることでそれぞれ 会社で 導入 ため 知見を得る
ことができる。これ HKICPAが個人 スキル 獲得を目的としている に対し、JICPA 会社
単位で 活用 ため 知見 提供を目的としていると整理できる。加えて、香港で スキルを習
得しAIを「活用」するために研修をしている一方で、日本で 活用事例を知りAIと なんたるかと
いう概観をつかみ、AIに「慣れる」ことを目的としているような印象を受ける。
こ ように両者 研修で それぞれ 良さがあるが、こ 違い ど ような背景・理由から生じ
る であろうか。以下筆者 考察である。
まず香港で 個人 スキル 獲得を目的としている一方、日本で 会社単位で 活用が前提と
されている点について 、香港 資源が豊かな国で ないため、会計士や弁護士 ような専門
人材 育成に力を入れているという国全体として 方針が大きく影響している で ないかと考
えられる。日本よりも専門的な「個」 育成を重視しているという背景が両者 研修内容に表れ
ている であろう。会社単位で 有効な活用事例を学び、各社がま ることにももちろん必要で
ある一方で、転職が当然 ようになってきている昨今 風潮から、特に若手 個人 市場価値
を高めることを重視する傾向にあり、また個人 成長が企業活動や企業間競争 活発化につな
がることを考えれ 、日本においても個人 スキルを醸成するため 研修を提供することも大い
に価値 あることと言えよう。
次に香港で 「活用」を目的としている に対し、日本で 一旦「慣れる」ことを目的としていると
印象を受けた点について。こ 点 あくまで筆者が受けた印象であり、各協会 真 狙い
別にある可能性も十二分にあること 、誤解を招く恐れがあるため言及しておく。そ うえで、こ
相違点 両国 状況、さらに言え 成熟度 差に起因していると筆者 考える。市場が成熟
している日本において AIにという新たなゲームチェンジャーに対して長く時間をかけて向き合う
という姿勢がみられる一方で、市場がいまだ成長期にある香港において (AIに限らず)新たな
事象を取り入れ、チャレンジするという姿勢が感じられる(国民性 違いに由来する、ともいえる
かもしれない)。積極的にチャレンジしている香港が偉く、比較的消極的な日本がよくないという
わけで ない。慎重に行動するという日本 姿勢も当然安全な企業運営 ために 必要であ
り、日本企業 これまでそ ような姿勢 もと着実に成長を遂げてきた。ただ、AIが市場に及ぼ
すインパクト 計り知れず、できるだけ迅 にAIを活用することが求められている現状をみれ 、
香港 チャレンジ 姿勢にも見習うべきところ ある かもしれない。
おわりに
ここまで、AI時代に会計士に求められるスキルや、日本と香港におけるAI人材育成 違いにつ
いて述べてきたが、最も基本的であり、かつ重要な 、会計士一人ひとりが持つ生成AIに対す
る取り組み姿勢であること 間違いない。実際、生成AIを監査業務へ適用するという観点から見
た場合、日本と香港 間に技術的な水準や利用可能なツールそ も に大きな差があるわけで
ないと感じた。しかしながら、「よく分からなくても、まず使ってみる」という姿勢について 、香
港 ほうがより色濃く表れていた。日本 監査実務において見られる慎重な姿勢 、監査という
業務 性質上、
一定程度必要不可欠なも である。
一方で、生成AIが有する可能性や、技術が
急 に発展している現状を踏まえると、リスクを理由に利用を控える で なく、限定的な範囲で
も試行錯誤を重 ながら活用していく香港 「まずやる」という姿勢 、今後 日本 監査実務
においても見習うべき点が多いといえる。
以上を踏まえ、私たち若手会計士 こ 先ど ような行動をすべきであろうか。以下、筆者
考察と提言を述べる。生成AI時代において若手会計士がすべき最重要事項 、業務 言語化と
構 化であると筆者 考える。
AIを利用するにあたり、まず 業務 言語化が必要になる。生成AI 自然言語、すなわち、私
たちが普段使っている言葉をインプット データとして必要としている。そ ため、AIを利用する
ために 日常業務を明確に自分 言葉で説明できるようにならなけれ ならない。例え 証憑
突合 、総勘定元帳から金額的重要性を基準としてn件サンプルを抽出したうえで、それぞれ
仕訳内容が、請求書に記載 取引先、日付、金額と一致しているかを確かめることである、と
いったように言語化できる。
言語化 粒度として 、業務を何も知らない新入社員が一回で理解できるレベルまでブレイク
ダウンして言語化する必要があると筆者 考えている。これを読むと、「AI 知識 人間を超え
ている だからある程度 粒度で十分な で ?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれない。
もしそう思われた であれ 要注意である。たしかにインプットやプロンプトが雑でも、ある程度
精度でアウトプット 得られる。ただ、私たちがAIを活用しているフィールド 監査業務であり、
ある程度 精度で 妥協されない。そ ため、AI 業務について何ら 知識を持たないと想定し
て言語化、インプットをすべきである。前提として私たち 生成AI 専門家や開発者で なく、あ
くまで監査実務を担う専門職である。そ ため、生成AIを過度に万能な存在として捉える で
なく、「監査業務 中でど ように使うか」「どこまでを人が担う か」を冷静に整理したうえで活
用していく必要がある。生成AIを利用するにあたって 、社内における情報共有やキャッチアップ
も重要であり、例え 、新しいバージョン リリース情報、実務上有効だったプロンプト 共有な
どを通じて、組織的に知見を蓄積していくことが求められる。
次に構 化である。これ 業務 構 化とデータ 構 化 二つにわけられる。業務 構
化 、わかりやすくいえ 現状 業務 どこにAIを適用する余地があるかを把握するということ
である。CATと やり取りにおける翻訳、突合、データ収集等、ど 場面で活用 余地がある
かを構 的に理解する必要がある。データ 構 化について 、AIが活用しやすい形でデータ
を構 化することである。前述 、精度 高いアウトプット 精度 高いインプットを前提としてい
るという点を踏まえると、AI インプットに適した形でデータ管理することが重要であること 明確
であろう。AI インプットに適したデータと エクセル ように行と列にわかれているデータであ
り、要 人間が見てもわかりやすい形でデータを整理する癖をつけようという話である。
以上に述べた言語化と構 化を意識するか否かで、AI時代を生き抜く若手会計士に大きな差
を生むと筆者 考える。これ 単にAIを有効活用できるようになるからといった理由だけで な
い。筆者が強調したい 、日々 業務一つ一つを言語化・構 化する努力をすることで、自分
自身が業務を体系的に理解し、複雑な会計論点や監査手続を自分 簡単な言葉で説明できる
ようになるからという理由である。AI時代でさえも監査業務において 、ヒト対ヒト 場面がなくな
ること 決してなく、複雑な論点もAIが答えてくれるようになるだろうという考え 危険である。目
前 業務一つ一つに正面から向き合い、常に隣に空想 新入社員を置いたうえで、言語化と
構 化 意識を持ち続けたいも である。
参考文献
・KPMG 「How AI is transforming auditing and financial reporting」
https://kpmg.com/au/en/insights/artificial-intelligence-ai/ai-transforming-auditing-and-financial
-reporting.html
・PwC 「Transforming the audit through technology, AI, and human insight」
https://www.pwc.com/us/en/services/audit-assurance/library/transforming-the-audit.html
・HKICPA 「Key areas accountants should pay attention to in 2025」
https://aplus.hkicpa.org.hk/2025-issue-1-key-areas-accountants-should-pay-attention-to-in-2
025/
・PwC Japan 「内部監査におけるAI活用 ポイント」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/utilization-of-ai-in-internal-audits.html
・JICPA 「テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAI 利用に関する研究文書」」
公表について(2024/8/13)「テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAI 利用に関す
る研究文書」」 公表について | 日本公認会計士協会
・JICPA 8/6開催研修会「監査人必見!AI時代 新働き方」 ご案内 (2025/5/14) 8/6開催研修
会「監査人必見!AI時代 新しい働き方」 ご案内 | 日本公認会計士協会
・HKICPA Guarding the Future: Managing Risks and Ensuring Governance in Generative AI
for Accountants (2025/6/20) Event Detail – MyCPA
・HKICPA Financial services in the era of generative AI: Facilitating responsible adoption
(2025/7/31) Event Detail – MyCPA
・PRtime 「合同会社HOHO、日本公認会計士協会にて生成AI研修を実施」(2025/9/18)合同会
社HOHO、日本公認会計士協会にて生成AI研修を実施 | 合同会社HOHO プレスリリース
