日本公認会計士協会 準会員会

活動報告(東京)

木下専務理事、座談会報告

公認会計士協会 木下俊男専務理事座談会 報告

去る2010年12月18日に準会員を対象とした日本公認会計士協会木下俊男専務理事による座談会が開催され、「海外で働くということ、グローバルな会計士になるために」というテーマでお話し頂きました。
今回の座談会の内容をインタビュー形式で以下に掲載致します。ぜひご一読ください。

「海外での経験は何にも替えがたいもの」

Q 国際派としてご活躍されている木下さんですが、どのような海外での経歴をお持ちなのでしょうか。
A 1985年2月に当時の中央監査法人からクーパース・アンド・ライブランド(現プライスウォーターハウスクーパース)のニューヨーク事務所に派遣され、その後デトロイト、ロサンゼルスそして再びニューヨークでアメリカに20年5カ月滞在していました。現地では、会計監査のみならず、在米日系企業に対する経営コンサルティングを行うなど、幅広い活動を行っていました。言葉の壁や文化の違いに戸惑うこともありましたが、日本においては到底経験できないさまざまな業務経験ができたと思っています。

「アメリカと日本では、会計士が関与できる分野が大きく異なる」

Q 実際にアメリカで仕事をされて、どのような点で日本との違いを感じましたか。
A 仕事内容についていえば、アメリカと日本では、会計士が関与できる分野が大きく異なるという所に大きな違いを感じました。アメリカでは監査法人ではなく、いわゆる「アカウンティング・ファーム」です。すなわち、アカウンティング・ファームは監査のみならず、税務・コンサルティングを事務所内ですべて行っています。海外では、日本では経験できないことが必ず経験できると思っています。アメリカでは、監査部門に属していても監査に+αの機会があるため、色々なものの見方ができる人がいるし、いろいろな経験ができるように感じますね。

「あなたのスペシャリティは何か」

Q アメリカと日本では大きな違いがあるとのことでしたが、具体的には何が違うと思いますか。
A アメリカの会計士は、“CPA”だけに満足していないという所でしょうか。アメリカでは、Big4のパートナーでCPAだけの人は少ないです。アメリカでは、スペシャリストということがまず大切であり、業務を行うとき又は転職するときに自らのスペシャリティは何かということを考えます。アメリカの会計士は、自らのスペシャリティを磨くために自分に対する投資は惜しみません。プロモーション又は転職する時に何のライセンス、何の実績があると自分が高く売れるかということを考えていると思います。皆さんにも企業等でも必要とされる会計士になるために、常に自分に投資をして自らのスペシャリティをしっかり磨いてほしいと思いますね。

「国内部・国際部の違いはない」

Q 監査法人の国内部で業務に従事している場合、国際部に比べると英語が必要でないと思いがちです。木下さんは会計士にとっての英語の必要性をどのようにお考えでしょうか。
A もはや日本の監査法人において国際部、国内部という区分はないと思っています。会計基準は国際財務報告基準、いわゆるIFRSに移行しようとしていますし、監査基準は世界会計士連盟(IFAC)が制定する監査基準に基づいている。会計基準も監査基準もグローバルベースで単一のスタンダードの適用という現実があります。それらの基準は原文は英語です。今や会計士にとって英語は必要不可欠な手段です。グローバルな会計士になるためには、まずは英語能力の具備が必須要件であり、そのためには、海外の友人を作ったり、旅行に行くなどのSTAYのみではなくLIVEの必要があると思います。旅行で滞在するなどのSTAYよりも実際にそこで暮らしていくというLIVEを経験した方が英語力の向上はもちろんのこと、グローバル会計士にとって有用な経験が積めると思います。機会があるならぜひ早いうちに海外に行ってLIVEしてほしいですね。
また、IFRSについても、日本語訳で勉強するよりも原文の英語を読んだ方がわかりやすいということもあるのですよ。

「会計士である前にビジネスマンであれ」

「Q 国内海外と多様な経験をお持ちの木下さんですが、会計士にとって大切なことはどのようなことであるとお考えですか。
A 会計士として会計・税務・監査等々の知識があるのは、専門家として当たり前のことです。その上で、ビジネスマンでなければなりません。つまり、クライアントに対して的確なアドバイスができる事実認識力や分析力、そして判断力があるかどうか、そしてコンサルタントのMINDがあるかどうかです。自分の職場の中で評価されることももちろん重要ですが、職場の外からいかに評価されるかが、その人のビジネスマンである会計士としての真の評価だと思います。クライアントから求められる会計士とは、単に知識や経験があるだけの会計士ではなく、その知識や経験をクライアントのために活かし的確なアドバイスができる会計士です。経験やコンサルタントのMINDはすぐに持てるものではありませんが、そのベースとなる知識は自分の努力でいくらでもつけられます。

「伸びるスタッフとは~PROACTIVE~」

Q 木下さんは、色々な人を若手と接してきたと思うのですが、伸びる人というのはどのような人なのでしょうか。
A 私の経験上、伸びるスタッフは、自分の行った業務に対して業務が終わった後、必ずフィードバックしていましたね。監査現場では時間に追われて作業を行っているため、自分が行っている作業の位置付け、意味等をゆっくり考えることができません。また自分の行ったミスをそのままにしておくと、自分のやった作業の意味を見失うことがほとんどです。だからこそ、実施した作業を自分で検証する必要があります。検証をすることによって、以後現場で同じ間違いは行わない、又は現場でそれを監査調書などを通して活かしていけると思いますよ。

「PROACTIVEであれ」

Q 最後に準会員へメッセージをお願い致します。
A 自分の人生のSTRATEGYを立てて、PROACTIVEに仕事をしてくださいということでしょうか。よく、活発に動いている人を AGGRESSIVEと呼ぶ人がいますがそれは違います。AGGRESSIVE は何というか、猪突猛進というか前だけを見る積極性をいいますが、そうではなく、筋道をしっかりと立てて積極的にかつ前向きに行動していく、これがPROACTIVEです。ぜひPROACTIVEに行動してほしいですね。
最後になりますが、これからの会計士業界を背負っていく若い会計士の皆様には、コンサルタントのMINDを持ちながら英語の勉強を含め自分にPROACTIVEに投資をし、世界から必要とされる優秀で有能な会計士になってほしいと思います。


 

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