日本公認会計士協会 準会員会

活動報告(東京)

講演会報告 三優監査法人 代表 杉田氏

会計士として、
今何を勉強しておくべきなのか


~監査法人の成功から得たもの~
2009/12/4  講演会報告
三優監査法人 統括代表社員 公認会計士 杉田 純先生

ベルリン、ダラスでの国際会議、アメリカに上場を企画しているクライアントへの往査。
アタッシュケースを片手に世界中を飛び回る―――――――
「夢がね、実現しているんですよ。」

日本で93番目に設立の三優監査法人。設立23年で売上高国内第8位、世界第5位のBDOインターナショナルのメンバーファームへと育て上げた。杉田氏は監査法人の統括代表社員でありながら、株式公開コンサルティング業界の第一人者でもある。
悩み多き会社の上場は三優に頼め、と敬意をこめて噂される。

杉田氏は、小学生からサッカー一筋で、高校時代はインターハイ出場、「大学でサッカーをやらなかったのが1つ目の転機ですね。大学でもサッカーをしていたら、会計士にはなっていなかったと思います。」
2つ目の転機は、大学1年の12月。横断歩道を歩行中、バイクとの交通事故に遭い、運転手が亡くなってしまった。相手は同じ大学1年生だった。「その人の分まで生きなければ…自分を厳しいところに追い込まなければいけないと思いました。」一念発起して公認会計士試験を目指した杉田氏は、恋愛を断ち遊びを断ち、大学4年生で合格。1971年のことである。
大学の恩師である日下部先生の勧めで、一度は学者になる道を選択した。しかし日下部先生が急逝、学者になる道が閉ざされ、大手監査法人へ就職した。

杉田氏の転機は続く。「父の経営する会社の経営が悪化、私は会計士で知識はあったので、債務圧縮に奔走しました。10億あった債務を、どうにかやりくりして3億円まで減らしたんです。でもまだ3億円ある。債権者との話し合いで、相手もなかなか譲ってくれない。その時、債権者側の弁護士が債権者に向かって「若い会計士がこんなに頑張ってるんだ。恥ずかしくないのか」って言ってくれたんです。雇い主に向かってですよ。本当にうれしかったです。」最終的に残った1億円の債務は杉田氏が保証し、その後10年ほどかけて返済した。
この一件で、得たものがある。「監査法人の上司であった松田先生(現早大教授)には、会社立て直しのために色々アドバイスしていただいたんです。私はとても感謝しているのですが、松田先生は私が真剣に会社を再建しようとしているのを見て、一緒に仕事をしたいと思ってくださったらしいです。」その後、松田先生は杉田氏とともに数年間仕事をすることになり、株式公開支援のノウハウも数多くご教授いただいた。

この時杉田氏は「会社を立て直すには、会計と税務だけでは役に立たない。」と痛感し、マーケティング、人事・組織、様々な分野の門をたたいた。コンピュータメーカー、銀行…貴重な出会いを繰り返し、会社に関する多くの知識を身につけていく。

そして1986年、三優監査法人設立。コンセプトは「つぶれない会社を作る手伝いをしよう」。会社に関する様々な知識・経験を生かし、株式公開支援業務を軸にした監査法人を設立した。

1996年、監査業界では世界第5位のBDOインターナショナルと提携。「当時はカッコイイものでもなかったんですよ。三優は国際的ファームと提携していなかったので、世界展開しているクライアントはどうしたって他の監査法人へ移ってしまう。一緒になって頑張って上場した会社がその後他の監査法人へ移ってしまうのが悔しくって。それで国際的なファームと提携しようと思いました。でも三優の内部では反対意見もありました。提携って、お金がかかりますからね。会議室で一進一退の攻防ですよ。そんな時、前に勤めていた監査法人の上司が電話で三優の社員を説得してくれたんです。」晴れてBDOインターナショナルと提携した三優監査法人は、飛躍的に成長していく。現在では、グローバルに展開するクライアントの獲得はもちろん、BDOの知的資源も利用することができるのだ。

人脈、師、友人――――――――。杉田氏が大切にしているものである。
「一人で頑張るのには限界があるんです。それが、人脈によって補われる。私は本当に良い師や友人に恵まれました。」

杉田氏の仕事に対する姿勢は、「信頼される心」に象徴される。
「熱心にこの会社を良くしたいという気持ちで仕事をすると、クライアントにも伝わるんですね。仕事が忙しくて、朝3時半に起きて始発の飛行機に乗って行くんです。毎回9時には福岡のクライアントに到着していて…「杉田さんは熱心にウチを見てくれている」とえらく気に入ってもらえたこともありました。私は早く帰らないといけないから早く行っていただけで、恐縮だったんですけども。」

株式公開コンサルの場面でも、杉田氏流の対応がある。
「クライアントの規模とか状況に応じてどのタイミングで何をやってもらうか、それがコンサルの腕です。一定の審査を経て上場するわけなので、上場直前の形は「こうあるべき」と決まっている。でも、過程が違うんです。会社をうまく回している、すごいキーパーソンの社長夫人に向かって頭ごなしに、社長の同一生計者が経理じゃだめだ、とか上場準備の早い段階で言ってはだめなわけです。」
  
監査に関しても、厳しくても「信頼される」監査を実践している。
「不正はないかって机叩いたって、不正なんか出てこないです。「トップからこういう指示を受けたのですが、大丈夫でしょうか」と経理の人から言ってもらって初めて、発覚するものだと思います。それには信頼関係が必要です。この先生に相談したら的確に答えが返ってくると、常日頃から会社のことを考えてくれていると普段から感じてもらえるような、知識と対応が必要です。」

最後に、準会員に一言。
監査法人で働いている準会員の方が多いと思いますが、独立を考えている方は、惜しまれて監査法人を辞めてくださいね。早く辞めろと思われているような方や、仕事をしていたら、独立しても絶対にうまくいかないと思います。
それと、監査は貴重な経験です。今しか見れないものをたくさん見ておくこと。将来、同じコンサルティングをやるにしても、この時期にはこの業種の倉庫にはこれくらいの在庫があるはず、とちゃんと理解しているコンサルタントは強いです。

杉田先生、貴重なお話を聞かせてくださいまして、本当にありがとうございました。

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