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第14回 リスクマネジメント(超)入門

登録日: 2007.01.01

「リスクマネジメント」という言葉をご存知でしょうか。直訳すれば「危険管理」、つまり「企業や個人に潜在するリスクを洗い出し(認識し)、その認識したリスクへの対策を考えること」です(正確な定義ではありませんが)。コンサルティングでは企業の抱えるリスクへの対策を提言することは当然仕事の一つとなりますし、会計監査の世界でもリスクアプローチが導入されていますので、対策の提言まではせずとも、如何に潜在的なリスクを認識できるかということは重要です。
今回はリスクマネジメントの基本的な考え方をお話しします。
 まず、順番は前後しますが、リスクへの「対策」についてお話しします。

 対策は大きく4つに分類できます。「保有」「軽減」「転嫁」「回避」です。早速、会計監査ではメジャーなリスク、「使い込み(横領)」を具体例として説明しましょう。
 「保有」とは、使い込みが発生しても損害を被る覚悟で、リスクを抱え込んでいる状態です。無為無策、とマイナスのイメージを抱かれるかもしれませんが、これも(リスクを認識していない場合は別として)立派な対策です。現金や貴重な財産がなく使い込まれてもせいぜい10円20円という会社であれば、費用対効果の観点から何もせずリスクを「保有」することも立派な選択ですから。
 次に「軽減」とは、リスクの発生する確率を低下させるための対策を採ることです。具体的には職務分掌や承認制度の導入などがあります。内部統制ではお馴染みの手法ですね。
 3つめの「転嫁」とは、リスクが生じた場合の損失等を第三者に負担させることです。保険がその代表例ですが、入社時に身元保証人が義務付けられた経験のある方も少なくないはずです。
 最後に「回避」とは、リスクの発生可能性自体を無くしてしまうことです。例えば、全て銀行振込や口座振替、収納代行会社を利用して自社の現場では現金を扱わないようにすることが考えられます。
 損害保険会社に在籍していた筆者にとっては、クライアントに「転嫁(≒保険)」を選択して頂けるよう誘導したくなる誘惑に駆られましたが、真にクライアントのことを思えば「保有」や「回避」を提案する勇気も必要でした。自己の売上に直結しない提案をすることは営業職にとって結構勇気がいるものですが、会計士としてコンサルティングをするのであれば、これら4種類の対策から真にベストな対策を提案することが可能なのではないでしょうか。

 それでは話を戻して、潜在的なリスクの「認識」についてお話ししましょう。前述の対策に関する知識も、リスクの認識ができなければ全く活用できません。潜在するリスクを洗い出すことこそ、リスクマネジメントの最重要作業と言えます。
 このリスクを「認識」するためには、実地調査、ヒアリング、類似事例の蒐集など、様々な方法があります。しかし最も重要なことは、筆者の私見ではありますが、「自由な発想」と「経験」だと思います。そして、これらは訓練によって身に付けることが可能です。では具体的にどのような訓練をすれば良いのでしょうか。
 まず、ある一つの題材を基に考えうる限りのリスクを書き出します。どんな馬鹿げたリスクでも構いません。実際に書き出してみて恥ずかしくなるようなモノも、意外と何か本質的なことを突いている可能性もあります。とにかく数多く挙げることが重要です。
 次に、そのリスクが発生した時の影響の大きさを考えます。致命的なダメージとなるのか、それとも少し痛い程度なのか。二次災害も想像してみると更に良いです。
 最後に、そのリスクの発生可能性を考えてみましょう。「あるある」なのか、それとも「そんな奴おらへんやろぅ」なのか。この予想損失額と発生可能性を把握することで対策の立て方も大きく変わってきます。
 また、慣れないうちは想像しやすい身近な題材を基に考えるといいでしょう。数人で一緒にゲーム感覚や雑談感覚でやるのも効果的です。

 この分野はとても奥が深いため、研究しようと思えばライフワークにもなりえますし、研究者によっても考え方が違います。しかし、会計士として触れるのであれば、このレベルの考え方を押さえておけば十分と思います。

では、本稿の最後に「筆者の1日の生活」を題材にリスクの洗い出しを練習しながらお別れしましょう。
 「朝寝坊するリスク」「満員電車で痴漢に間違われるリスク」「昼食時に財布を忘れ先輩にお金を借りるリスク」「帰宅中の繁華街で呼び込みに引っ張っていかれるリスク」「駅の階段で転んで骨折するリスク」「酔っ払って終電に乗り遅れるリスク」「翌朝寝坊するリスク」・・(以下、略。)

(文責:窪田 智信)

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