日本公認会計士協会 準会員会

インタビュー
( 会計業界 )

永井 文隆氏

ノーペイン、ノーゲイン

生年月日  1977年2月20日
出身地   東京都港区赤坂
合格年次  2005年
勤務先   監査法人トーマツ TS1
趣味・特技 ベンチプレス(MAX160キロ)

将来の夢  動物愛護を通じての社会貢献
座右の銘  No Pain, No Gain

【略歴】
東京都港区赤坂に生まれる。中央大学商学部を卒業後、プロのDJを目指し単身渡米。NY大会で2位に輝くもDJを断念。その後USCPAを取得し帰国。日本において会計事務所に勤めるも、日本基準の会計知識の必要性を痛感。公認会計士を志し、現在に至る。

― 「DJ」「筋肉」「アメリカ」。今回インタビューする永井氏を象徴する3語である。異色の会計士補、永井文隆氏が会計士を志すまでの経緯に迫ってみた。

ただ本場でもまれてこようという考えのもと、永井は単身NYに渡った。後先を考えず、永井は永井の夢を本気で追いかけた。
DJの世界大会に出場しレコード会社の目に留まること。それがプロのDJになる近道だと考えた。永井はアメリカから、友人は日本から、それぞれ世界大会を目指した。

本場NYでの日々

それから永井はNYで日々DJバトルに明け暮れる。3分程度の時間の中でDJとしてのテクニックを最大限に披露し、競い合う。1対1のケースもあれば、コンテスト形式もある。それがDJバトルである。永井はNYのクラブを次から次へと渡り歩き、日々着々とテクニックを磨いていった。

DJとしての夢のために

「おまえは日本から世界を目指せ。俺はアメリカから世界を目指す。」 この友人との約束が永井渡米のきっかけだった。

DJとして世界に動物愛護のメッセージを発していきたい。それが動物を愛する永井が抱いた夢だった。そのためにはプロのDJとして食べていくことはもちろん、プロデューサーとして名前を売り、世界にメッセージを発するだけの影響力が必要だった。一見すると途方もないと思われるような大きな夢である。DJとして名が売れていたわけでもない、英語もしゃべれない。
そして、大会を迎える。永井は地区大会を勝ち上がり、NY大会へとコマを進めた。
NY大会当日、NY中の腕自慢が会場に集まっていた。会場を埋め尽くすニューヨーカーの中、異国からの参加者として永井はステージに立つ。NYで身に付けたテクニックを3分間の中に散りばめた。永井の渾身のプレイに与えられた評価は、NY大会2位。 1位のみが全国大会への出場権を有する。永井の世界大会出場への夢はNY大会決勝で幕を閉じた。その頃、永井の友人は日本大会から世界大会への出場を決めていた。明暗が別れた。

手ぶらで帰るわけにはいかない

永井はNYにおいてDJバトルを繰り返しより広い世界を見ていくことで、NY大会では2位という結果を収めたものの、プロとして食べていくのは無理だ、ということに気付き始めた。DJとしての夢を追いかけることに限界を感じていた。しかし危険を顧みず全力で追いかけた永井に悔いはなかった。
「アメリカまで来て、手ぶらで帰るわけにはいかない。食べていくために必要なスキルを手に入れなければ。」 DJを断念した。

永井がまず考えたのがそれだった。様々な雑誌や新聞等で情報収集し、永井の目に留まったのがUSCPAだった。残されたアメリカでの滞在期間を費やし半年という短期間で永井はUSCPAを取得する。当初予定したものとは180度異なる『食べていくためのスキル』を手に、永井は帰国した。

会計的力不足、体力の限界

帰国後、永井は中小会計事務所に勤める。帳簿作成業務がメイン業務であった。そこで永井は会計的な力不足を痛感する。USCPAをあまりに短期に取得したため、根本的な会計知識の定着がなされていなかったのである。そのためクライアントからの無理な要請にも反論するだけの知識、会計的思考能力が備わっておらず、結果として言われるがまま業務をこなさざるを得なかった。そこでの業務は多忙を極めた。しかし永井は会計的力不足を解消すべく、もともと少なかった睡眠時間を更に削って帰宅後、会計の勉強に励んだ。
身長183cm、体重96kg、筋肉隆々、ベンチプレスは160kgを上げる。そんな体力には自信のあった永井であったが、睡眠時間をほとんどとらない日々を重ね、ある日業務中に卒倒した。体力の限界だった。
「これじゃ埒が明かない。本気で会計を勉強したい。」 永井は日本において会計を職業とするにはUSCPAの知識だけでは足りないと感じ、勉強に専念すべく会計事務所を辞職。公認会計士を志す。そして、ここから永井の受験生活が幕を開けた。

― 1時間にわたるインタビューの終わりに座右の銘は、と永井氏に聞いてみた。「ノーペイン、ノーゲインかな」。何のためらいもなく返ってきた答えがそれだった。これまでの永井氏の生き様を語るにふさわしい座右の銘に、私は笑みがこぼれた。

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