日本公認会計士協会 準会員会

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第6回 ~法人説明会を通じて~

2005年8月25日、2005年度公認会計士2次試験の全日程が終了した。
年に1度の短答式、論文式に全力で挑み、受験生はかなりの体力、気力を消耗したはずである。ゆえに試験会場からの帰り道では悲喜交々の想いが交錯したことだろう。

その日、会計士、会計士補の方はどのように過ごされただろうか。
仕事に没頭しそのようなことに気づかずに過ごされた方、そういえば今日で終わりだなと気付いていた方、論文式お疲れ様の旨のメールを受験生に送った方、受験の労をねぎらうべく飲みにいった方、などなど。

昨年の論文式試験終了後、私は受験仲間と二人で飲みにいった。お互い3年目の受験とあっていろいろ思うところがあり、とにかく受験できたことに感謝しなくてはという心境だった。

合格後、そろそろ1年が経つ。1年でここまで自らの状況が変わるものかと改めて驚く。
1年前は何の肩書きもない、お金もない、そして働いていないという状況だった。

常に勉強しなくてはという焦りや、果たしていつか合格できるのかという不安があった。
1年後の今、そのような焦りや不安からは解放され、肩書きも収入もありそして働いている。
今は今で苦労や悩みがあるけれども、1年前の苦労や悩みとはまるで質の違うものである。

自分の状況の変化になんとなく慣れていく中で、私は今年の法人説明会にリクルーターとして参加した。よりよい法人説明会にするためにはどうすればよいか、といったことを考えるにあたり、リクルーターメンバーで1年前の自分の心境を思い出してみることにした。

専門学校の教室や周辺の風景を思い出してみると、それに伴って受験時代の生活が思い出された。朝早くから専門学校に行って自習室の席を確保し、授業を受け、答練を受け、疲れたら専門学校周辺を散歩した。昼食は主に立ち喰いそばで、夕方になるとパンを買って空腹をしのいだ。毎日同じことの繰り返し。いい加減勉強を投げ出したくなるものの、いつまでこんな生活が続くのかということを考えると受かりたいが故に勉強せざるを得なかった。焦りと不安は常につきまとっていたように思う。

自らの受験時代の心境を振り返り、自分なりに受験生の心境を思い、法人説明会に臨んだ。

1年前、もっとこういう情報が欲しい、こういうプログラムがあって欲しい、などと考えていたことを今年の法人説明会には反映することができたように思う。想像していたよりもかなり多くの時間と手間を要した。1年前、自分がなんとなく回っていた法人説明会には、実はこれほどの苦労がその裏に隠されていたとは思わなかった。しかも今年は人手不足のため売り手市場が予想され、各法人とも受験生獲得のためリクルート活動に大いに力を入れている様子であった。

約一週間の期間に亘って受験生と接することができた。1年前、法人説明会を回った際、リクルーターの方々が親身になって質問や相談に応じてくれたこともあり、今年は自分も極力受験生の質問や相談に応じようと思った。そして法人説明会終了後、質問コーナーを設け多くの受験生の質問、相談に応じた。

「監査ってどういうことをやるんですか?」「監査はおもしろいですか?」といった質問を多く受けた。私が日常やっている業務に対する根本的な質問である。
この質問に答えている時、今更ながら合格を実感した。合格してはじめて答えることが出来る質問である。私の説明を受験生は興味をもって聞いてくれた。受験生の要望に応えて説明しているのであるが、説明できることが嬉しく、不思議とありがたいなぁとも思った。

質問を受けた方の中には妻子をもった方、年配の方もいた。不合格だった場合どういう意思決定をすればよいか、今の歳で受かっても就職先はあるのか、といった質問もあった。そして、もうこれ以上受験する経済的余裕がない、一日も早く働きたい、合格発表を迎えるのが怖い、という相談もあった。
切実な問題であり何とか役に立てればと思うも、あくまで当人の問題であり、私なりの考えを述べる他どうしようもなかった。

数多くの受験生と接し、いろいろなことを考えさせられながら法人説明会の全日程を終えた。法人説明会の準備等で相当ハードな日々が続き、更にこれから中間監査を迎えるとなるとなかなかつらいものがあるが、しかし、本当にリクルート活動をやってよかったと思う。

ほんの1年前まで私も今回接した受験生と同じ疑問や悩みを抱えていた。
そして合格発表後1年が経ち、そのような疑問や悩みは消えていった。
合格したのがずいぶん昔であるかのように感じるほど会計士補としての生活にも慣れた。
受験生のときに抱えていた不安や焦り、悩みが消えたということが、いかにありがたいことか、ということを思い直してみることもなくなった。

そんな今、リクルート活動を通して、少し初心に戻れたような気がした。

日常の業務において多少なりとも悩みや苦労はあるものの、その悩みや苦労すらも合格の証と思えば、少し捉え方が変わるように思う。

(文責:藤田 耕司)

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