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「弁護士&公認会計士、ダブルライセンスのススメ」…四国分会インタビュー実施報告

登録日: 2010.10.04

 準会員会・四国分会は、四国出身の会計人の活躍を伝えるべく、インタビューを実施しております。
 10月4日(火)、弁護士・公認会計士であり、不動産鑑定士試験合格者でもある籠池信宏先生(香川県丸亀市出身)を訪ねて、事務所でお話を伺ってきました。

 

 籠池先生は、弁護士としてご活躍中に、不動産鑑定士試験に合格し、さらに、科目免除・短答免除の特典を生かして、公認会計士試験にも合格されています。弁護士から見て、公認会計士試験はどのような試験だったのか? 監査法人での実務経験はどのように見えたのか? 弁護士業務と会計士業務はどうちがうのか? そしてやはり、結論は、弁護士・公認会計士のダブルライセンスは、「オススメ」ということです。

 

 以下、インタビュー記事です。ぜひご一読ください。

 

(佐久間)本日は、お忙しい中準会員会・四国分会インタビューのためにお時間を割いていただき、まことにありがとうございました。早速ですが、簡単に経歴を教えてください。

 

(籠池先生)平成3年に司法試験(二次試験)に合格、平成4年から大阪地方裁判所配属の司法修習生となる。司法修習修了後、平成6年に弁護士登録(大阪弁護士会)。平成11年に不動産鑑定士試験二次試験合格、平成12年に香川県弁護士会に登録換え。平成16年に公認会計士試験二次試験に合格し、平成21年に公認会計士登録しました。

 

(佐久間)司法試験合格にいたるまでのプロセスを教えてください。

 

(籠池先生)大学(京都大学法学部)の同級生は、特に3回生くらいになると、就職(商社・銀行)を意識するグループと、司法試験を目指すグループに二極化していたように思います。
 私自身は、当時の友人関係から何となく後者のグループに属していましたし、マイペースな性格でサラリーマンには余り向いていないというような自覚もありましたので、特に就職は意識せず、3回生くらいから司法試験の勉強をはじめました。その後、約2年半の勉強で、司法試験に合格しました。
 法律学では、ある事案について法律の解釈を踏まえて論理的に結論を導くという、法的三段論法を用いた説得の技術が問われるのですが、そのような考え方が性に合っていたのか、法律の基本書や裁判例を読むことも割と面白く感じられましたので、司法試験の勉強自体はそれほど苦痛ではありませんでした(会計士試験の方が、計算問題もあってゴマカシがききませんので、よっぽど大変でした。)。

 

(佐久間)合格した時には、どのような弁護士になろうと考えていましたか?

 

(籠池先生)もともと明確な目的意識を持たずに司法試験を受験しましたし、弁護士の仕事がどのようなものなのかも良く分かっていませんでしたので、特に弁護士の理想像とか将来像とかは念頭にありませんでした。もちろん、当時は、不動産鑑定士試験を受験しようとか公認会計士試験を受験しようという考えは全くありませんでした。

 

(黒木)司法修習とは、どんなところでしょうか?

 

(籠池先生)当時は2年の修習期間で、その間、司法修習生として、司法研修所と実務配属庁(実務修習の配属先の裁判所、検察庁、弁護士会)とで法律実務を修習しました。私の場合、大阪が実務配属庁でした。
 司法修習、特に実務修習では、実際に起きている案件を目の前にして、裁判官、検察官、弁護士のそれぞれの事件処理の仕方やモノの考え方を垣間見ることができ、非常に勉強になりました。なにげない雑談からも学ぶことが多かったです。司法修習生のときであれば、教える側(教官)と教えられる側(司法修習生)ですから、どのような質問もできるのですが、資格を得てからは、お互い対等な立場ですから本音の部分を聴くことはできません。こういうことは、司法修習生時代だけの特権だと思います。

 

(黒木)大阪での勤務弁護士のときの様子を教えてください。

 

(籠池先生)実務配属庁が大阪だった関係で、その延長で大阪の法律事務所に勤務弁護士として就職しました。弁護士数が10数名の規模で、とにかく幅広い分野をカバーする法律事務所でした。
 今は、香川県で開業していますが、弁護士業務のスタートとして大阪で幅広い分野の事件を担当できたことは、大変有益で何にも代え難い財産になっています。

 

(佐久間)不動産鑑定士試験、公認会計士試験も受験しようと思われたきっかけを教えてください。

 

(籠池先生)大阪で勤務していた時期は、ちょうどバブルが崩壊した直後で、不動産の価値が急激に下落した時期でもありました。このような時代背景もあって、不動産関係の訴訟では、不動産の価格や賃料を巡って紛争が生ずることが多く、不動産鑑定を利用する機会が多々ありました。訴訟で不動産鑑定を利用する場合、その内容を理解できなければ、的確な主張や反論ができませんから、市販の書物を読むなどしてある程度勉強することになり、このような中で、自然と不動産鑑定に興味を持つようになりました。
 また、大阪の勤務事務所では、倒産処理事件に携わることも多かったのですが、倒産処理事件では、不動産を中心とした資産査定が重要になってきます。管財人・債務者サイドと債権者サイドとの間では、担保評価(資産評価)を巡って鋭く利害が対立する訳ですが、その調整を図るためには、不動産鑑定の理論や手法に通じておく必要があり、その知識を前提として不動産鑑定を上手く利用することが重要になります。
 当時は、取引事例比較法や原価法が未だ実務的評価手法の主流でしたが、鑑定評価理論上は、収益還元法(ちなみに、今でこそ広義の収益還元法に属するDCF法が評価手法の主流に位置づけられていますが、当時は、不動産鑑定評価基準(旧基準)にもDCF法は記されていませんでした)が最も合理的な価格を指向する評価手法として位置づけられており、そのような考え方(今でいうインカムアプローチ的評価手法)が、バブル崩壊後の時代の流れにマッチしていたこともあって、非常に啓発されましたし、役立ちました。
 不動産鑑定士試験を受験しようと思ったのは、どうせ勉強するのであれば到達目標が明確な方がやり易いし、動機づけにもなるという考えからです。不動産鑑定士試験では、建築基準法、都市計画法、土地収用法といった行政法規も受験科目とされており、司法試験以外の法律科目を勉強する良い機会になりました。最近、「法と経済学」という研究分野にも注目が集まりつつあるようですが、ひょっとすると、今後、試験で勉強した経済学(ミクロ・マクロ)の知識も役立つことがあるかもしれません。
 公認会計士試験については、倒産処理事件に携わる関係上、B/S、P/Lその他財務書類の内容を理解できないと話になりませんので、会計の知識の必要性は強く感じていました。ただ、本格的に勉強するだけの時間もありませんでしたので、公認会計士試験に向けて勉強しようというまでには至らなかったです。
 そのような中で、契機になったのが、香川県弁護士会への登録換えです。香川県に帰ってきたばかりの時期に、偶然、高校の同級生に駅で会うことがありました。その同級生は、公認会計士として監査法人に勤務しているとのことで、興味を持つようになりました。香川県弁護士会へ登録換えをした後暫くの間は、時間的な余裕もありましたし、非常にタイミングの良いきっかけになりました。

 

(佐久間)特に、公認会計士試験は計算科目などがあって司法試験のようにはいかなかったと思いますが、

 

(籠池先生)司法試験と不動産鑑定士試験の合格で、短答式試験が免除され、論文式試験の試験科目も4科目(簿記・原価計算・財務諸表論・監査論)に限定されますので、何とかなるだろうと甘い考えで試験勉強を始めたのですが、とんでもありませんでした。
 今から考えると馬鹿げた話ですが、最初に公認会計士試験を受験したときは、碌に準備もせず下調べ的な感覚で論文式試験に臨んだところ、周囲の受験生全員が恐ろしいスピードで、しかも左手で電卓を打ち始めて、その異様な空気に圧倒されてしまいました。当時、私は、ブラインドタッチすらまともにできませんでしたから、試験時間中、ひたすらタテケイをしてやり過ごすことになりました。このことがトラウマになったのか、私の場合、とにかく計算問題(簿記・原価計算)が苦手で、特殊商品売買の原価率算定問題などには非常に悩まされました。
 毎年のように、会計基準や監査基準が変更され、その度に新基準を勉強し直さなければならなかったのにも閉口しました。
 一番大変だったのは勉強時間の確保の点ですが、休日や仕事の合間の時間をやりくりし、途中で挫折するのも嫌なので少しずつ勉強を続けました。論述科目は得意でしたので、計算科目を論述科目(財務諸表論・監査論)で補って、なんとか合格できたのだと思います。

 

(佐久間)実務経験として監査法人に勤務されていたとき、公認会計士の仕事がどう見えたのかを教えてください。

 

(籠池先生)それまでは、公認会計士の監査業務に関しては、最終成果物である監査報告書しかみたことがなく、正直、とても楽な仕事なのではないか思っていました。監査業務の成果は、監査報告書というかたちでしか外部に表れず、監査報告書の作成に至る途中過程の業務内容は外部には分からないので、おそらく公認会計士の監査業務は楽な仕事だと思っている人は結構多いのではないでしょうか?
 しかし、監査法人に勤務してみて、私の考えはとんでもない誤りだったということに気付きました。監査報告書の作成に至るまでの過程で、膨大な監査手続を実施し、これらを踏まえた監査調書が作成されていることが理解できましたし、クライアントとの微妙な関係の中で仕事をしていることも理解できました。近時、大型粉飾事件を巡って監査法人の責任がクローズアップされているのをみるにつけ、今ではむしろ、色々な意味で「こんな大変な業務はない」のではないかと思っています。
 弁護士業務の場合、例えばクライアントが弁護士に訴訟対応を依頼するようなケースですと、クライアントは勝訴するために、自ら積極的に証拠資料を開示し、事実関係のヒアリングにも協力的であるのが通常です。弁護士は、クライアントから依頼された業務に熱心に取り組めば、その分だけクライアントからは喜ばれる立場にあります。
 ところが、公認会計士の場合、クライアントやその担当者の中には監査業務を後ろ向きの業務として捉える向きもあり、そのような担当者からすれば、熱心に監査業務に取り組めばその分だけ嫌がられる、いわば「まねかざる客」の立場にあります。それにも拘わらず、ひとたび粉飾の事実が判明した場合には、監査に当たった公認会計士も法的責任の一端を担わされるリスクを孕んでいるのですから、公認会計士は本当に微妙な立場にあると思います。クライアントから報酬の支払を受けながら、他方では独立した職業的専門家の立場で、厳格な監査を実施し、意見を述べるという公認会計士の業務が、非常に悩ましく葛藤を抱えた業務だと理解できました。
 あと、一般の方は、公認会計士と言えば「1円の齟齬も許さない、すごく細かい職業人」という印象を持っているのではないかと思いますし、私自身も、以前はそのような印象を持っていました。しかし、実際に監査業務に関与してみると、監査業務は、物事を大局的に捉えることや、幅広い視野が求められる業務であることが理解できました。たとえば、重要性の考え方や、「財務諸表が全体として適正に表示されていることを保証する」という監査意見の考え方などは、当初のイメージとのギャップもあって新鮮に感じました。弁護士業務は大掴みな部分が多分にありますが、こと裁判手続に関して言えば、ある事実の存否をめぐってミクロの部分で勝敗が決することも多いので、見方によってはデリケートなのかもしれません。
 会計処理に関して相当程度解釈の余地があるということも新鮮に映りました。一般の方は、会計処理の方法は一義的に定まっているものだという感覚が強いと思うのですが、実際には、専門家としての解釈や判断を要する場面が多々あります。この点に関しては、弁護士業務も同様で、一般の方は、法律の解釈など一義的に定まっているものだという意識が非常に強いのですが、実際の法律問題を取り扱ってみると、判例等がなく解釈が定まっていない局面の方が数多く、常に専門家としての解釈や判断を求められます。この辺りは、公認会計士や弁護士が、いずれも職業的専門家として位置づけられ、日々の研鑽による専門的能力の向上を要請される所以なのかもしれません。

 

(佐久間)司法修習と公認会計士の実務補習・業務補助と比べて感じたことを教えてください。

 

(籠池先生)司法修習は、裁判官・検察官・弁護士が日常的に行っている法律実務を垣間見ることができ、一流の先輩方の仕事のやり方などから学ぶことも多く、見聞を広めることはできます。ただし、修習生という立場上、責任のある立場に置かれることがありませんから、どうしても問題意識のレベルは低くならざるを得ない面があります。公認会計士の実務補習についても同じことが言えると思います。
 職業的専門家としての知見や経験を得るためには、やはり、ある程度責任のある立場で自ら考え行動することが必要で、そのためには、現場で生起する生の事象に直面しながら、高い問題意識や責任感を持って業務に取り組むことが不可欠なのではないかと思います。その意味で、監査法人での業務補助は、非常に有意義な経験でした。私が業務補助に従事させて頂いた当時は、監査スケジュールがタイトで人も時間もあまり余裕がないような状況でした。その中で、幾つかの科目を割り当てられ、取り敢えず訳が分からないなりに前期調書を読解して、それを元に会社担当者からのヒアリングを行い、監査手続を実施し、監査調書を纏めるという格好でしたが、このようなプロセスを通じてはじめて、事務処理能力や納期感覚といった実務に必要なスキルが身に付けられるように思います。補習所での学習も、実務経験がなかったらピンとこないはずで、現場を経験し、監査業務補助と並行して学習することではじめて意味のあるものになると思います。

 

(佐久間)司法試験合格者数も公認会計士試験合格者数も、以前に比べて激増していますが、どのように思われますか?

 

(籠池先生)OJTの機会を与えることができるための適正な人数であることが必要だと思います。弁護士業務の場合、司法試験に合格し、司法修習を終えただけでは、満足に事件の見通しをつけられず、一人前の弁護士とは言えません。適切な指導者による指導監督のもとで、適度な責任を担いながらOJTを十分に積むことによって、最初は分からなかった事件の争点が見えてきたり、事件の将来展開が予測できるようになります。このように事件の見通しがある程度つけられるようになって初めて一人前の弁護士と言えます。
 市場のニーズに合わせて適正な合格者数を確保することは必要ですが、指導者からの適切な指導監督を受けることができず、十分なOJTの機会が確保できなくなるような過度の増員は、職業的専門家に要求される最低限のスキルと能力を欠いた資格者を生み出すことに繋がる虞れがあります。仮に、十分な実務経験を積まず、先行きの見通しを持たないまま、机上レベルのアドバイスや事件処理を行うような資格者が増えれば、クライアントに対して思わぬ損失を被らせるリスクが高くなりますし、弁護士や公認会計士など資格制度そのものに対する社会的信用が失われるリスクがあるのではないかと危惧します。

 

(佐久間)司法試験・公認会計士試験に合格しても、就職が非常に難しくなっています。今までとは異なった領域で司法試験合格者・公認会計士試験合格者が活躍できる場面として、どのようなものが考えられますか?

 

(籠池先生)実務に従事していると、法律・会計の双方の知識が要求される場面に多く出くわします。このような法律・会計の双方の領域に跨る分野は、思いのほか広いというのが実感です。弁護士が取り扱う業務のうち、倒産処理事件や税務争訟事件では、会計の知識は不可欠ですし、相続関係事件などの一般民事事件でも税務上の処理が問題になることが多々あります。弁護士の中には数字に強くない人も多いので、会計の知識を持っていることは大きな強みになると思います。

 

(黒木)弁護士であることに加え、公認会計士であることで、強みを感じた場面について教えてください。

 

(籠池先生)公認会計士になるための同じルートをたどっているわけですから、公認会計士の考え方やモノの見方がわかったことが強みだと思います。公認会計士や不動産鑑定士等の職業的専門家には、それぞれ特有の理念や業務処理の方法、得手不得手の分野があります。それがわかっていれば、職業的専門家の活用の幅が広がるほか、業務処理を依頼したときのコミュニケーションも円滑にすすめることができます。
 例えば、弁護士が民事事件を処理するに当たって、公認会計士による広義の保証業務の活用が考えられるような場面が少なからずあります。そのような場面で、公認会計士の業務を効果的、効率的に活用するには、公認会計士の業務に関する理解がなければ難しいように思います。公認会計士の考え方やモノの見方が分かれば、公認会計士に業務を依頼した場合の業務処理方法や成果物の予測がある程度できますし、リスクの程度に応じたオーダーを出すこともできますので、そのような点は大きなメリットです。
 それぞれの職業的専門家の考え方やモノの見方が分かるというのは、案件の展開や成果の予測という点で非常に有益です。これは共通の資格取得のプロセスや実務経験を経ることで、言わば「同じ釜の飯を食った」者だけが共有することのできる感覚で、机上の知見だけでは得難いものだと思います。

 

(黒木)監査役や管財人といった会社側は、公認会計士・弁護士に必要な能力・素養についてどう考えていますか。また、会社側として、複数資格が有利に働いた場面について教えてください。

 

(籠池先生)公認会計士・弁護士とも、幅広い分野をおさえている人が重宝されると思います。幅広い分野をおさえていることで、クライアントのニーズに的確に対応することができますし、業務処理上のコミュニケーションを円滑にすることができます。
 かなり特定の分野に限定されるのかもしれませんが、倒産処理業務に際して資産査定業務等を依頼するような場合には、民法や倒産法に関する最低限の知識は不可欠で、そのような知識や経験がない場合には、適切に業務処理をすることが容易でないように思います。
 倒産処理業務の場合、不動産鑑定士・公認会計士のサポートを得ながら業務処理をする場面が多いのですが、両分野の知見があることで、ある程度「落とし所」の予測がつくというところはあります。
 監査役の職務を行う上でも、監査業務のプロセスを知っていることは、会計監査人とのコミュニケーションを図る上で有益だと思います。

 

(佐久間)複数資格を保有していると、それぞれ知識のアップデートをしなければならないと思いますが、どう工夫されていますか?

 

(籠池先生)監査業務に関する知識という点では十分ではありませんが、少なくとも日常的に法律・会計の業務に関与していることで、実務処理に必要な最低限の知識はアップデートすることができます。
 資格を保有していることで有益なのは、問題を解決するためのアプローチの仕方を分かっているという点だと思います。たとえば不明な点があった場合に、専門的知見がなければ、その問題を解決する方法自体を見出すことができませんが、専門的知見があれば、仮にその場で解答を見出すことができなくても、何をどのように調べたらいいのかを知っていますから、解決への当たりをすばやく的確につけることができます。このような意味で、細かな知識のアップデートというよりは、むしろ実務に従事する中で、日々発生する問題に対処することを通じて、絶えず実務感覚を研ぎ澄ましておくことの方が重要なのではないかと思っています。

 

(佐久間)最後に、複数資格を保有すること(会計士が弁護士資格を取得すること、弁護士が会計士資格を取得すること)は、キャリアアップの手段として「オススメ」ですか?

 

(籠池先生)もちろん、「オススメ」です。今後、弁護士も公認会計士も資格者増大で大競争時代に入ることが予測されますが、複数資格の保有は、最も分かりやすい差別化の方法だと言えます。
 勿論、資格を取得しただけではだめですが、法律・会計の両スキルを身につけることで新たな業務分野を開拓するチャンスが増えることは間違いありません。
 また、異なる専門分野を習得することで、多様な側面から物事を見ることができるようになり、考え方の幅が広がることにも繋がります。私自身は海外留学をしたことはありませんが、公認会計士の実務補習や業務補助を経たという経験は、それまでと異なった世界を見聞し、多様なモノの見方を身に付けることができたという意味で、「留学」に近い経験だったのではないかと思っています。

 

(佐久間)今後求められる会計士像について教えてください。

 

(籠池先生)今後は、社会経済がより一層複雑になることが予想されますので、それに応じて幅広いモノの見方のできる会計士が求められるのではないかと思います。幅広いモノの見方ができれば、顧客のニーズを的確に掴むことができますし、目先を利かすこともできますから、クライアントとのコミュニケーションもスムースにいき、双方とも安心して仕事ができます。

 

(佐久間)多様なキャリアをお持ちの先生だからこそ分かる会計士の魅力とは何でしょうか。

 

(籠池先生)監査業務を通じて、様々な企業の生態(正常業務)を知っていることだと思います。監査人(会計士)でなければ監査はできませんし、「監査が基本」というのはその通りだと思います。 会社の正常業務を間近に見ることは、一般人はもちろん、弁護士であってもできません。会計士はそういう立場です。
 弁護士は、業務の性格上、訴訟事件や倒産処理事件を通じて、クライアントのイレギュラーな側面しか見ることができません。弁護士は、会社の業務としては不適正な状態の病理現象を取り扱うのが一般的で、クライアントのあるべき正常な姿を観察する機会は思いのほか少ないのです。
 私自身、監査補助業務を通じて、様々な企業の日常的・生態的な企業活動に触れることができ、「あるべき正常な姿」を知ったことは、とてもよい勉強になりました。企業の正常業務を知ることで、企業内部あるいは企業間でどのような書類がやり取りされているかを具体的にイメージすることができ、そのような経験は、弁護士業務でも大いに活かされています。

 

(佐久間)若手であるうちに絶対にしておくべきことを教えてください。

 

(籠池先生)とにかくどんなことでも質問して、「一時の恥」をかくことです。どんなことを質問しても、若手のときの質問は「一時の恥」ですまされます。知らなければ積極的に質問して、勉強していけばいいのです。年齢を重ね、ある程度のポジションになってくると、なかなか「一時の恥」ではすまされなくなります。どんなことでも質問して「一時の恥」をかきつつ、勉強できることは若手の特権だと思います。

 

本日は貴重なお話を頂き本当にありがとうございました。

 

(インタビューを終えて)
 公認会計士試験・司法試験ともに、合格者数が20年前にくらべてほぼ4倍に、10年前にくらべてほぼ2倍になり、資格を取得しやすくなったことは事実です。しかし、そうなると資格取得後に待ち受けるのは大競争の世界です。複数資格の取得もその大競争に勝ち抜くためのひとつの答えでしょう。複数資格を取得したことの効用をきかせていただくだけでなく、資格を取得したのちにどのような問題意識を持ち、どのような職業的専門家を目指すべきなのかを考える機会を与えてくれたとても良いお話だったと思います。
(責任者-佐久間)

 

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